イラストレーターのポートフォリオの作り方を説明します。ここでいうイラストレーターというのは、企業から依頼をうけて制作をする職業のことを言ってます。アーティストの話ではありません。
多くのイラストレーターが、ポートフォリオといいながら「画集」を作ります。仕事依頼がほしいなら、それじゃダメです。
申し遅れました。この記事を書いているいしつく!の運営者は、地方在住で、イラストレーターとして独立したときコネも人脈も仲間もなかったけど、ウェブサイト作りと商談会とか営業とか地道にやってきて、大手企業の仕事なんかもたくさん経験してきた人です。
だからポートフォリオを作るときなにが大事なのかを、よ〜くわかっているつもりです。
ポートフォリオとは何なのか
ポートフォリオは作品集とも言いますが、イラストレーターだったらその作品をまとめておいた書類のことです。
語源は「書類入れ」です。いろんな情報を集めてひとつにまとめた様子からそう呼ぶようになったそうです。
イラストレーターがポートフォリオを作る目的って、学生以外なら「仕事の依頼を取りたい」、ほぼそれ一択です。なので、その目的を果たせるものをここでは「ポートフォリオ」と呼びます。
「作品集」っていう呼び方がよくないですね。本当は「営業資料」であり、「製品カタログ」「制作事例集」であり、「事業案内」であるべき、それがポートフォリオが本当にもつべき役割です。
よくある間違い : 画集を作るな
とはいってもそれを一発で理解できるイラストレーターは少ないので、大体の人は「画集」ライクなものを作ってポートフォリオと称しています。
画集ライクなもの、っていうのは、とにかく絵だけを並べてあるもののことです。
なんなら、えらいかわゆいまたはクールすぎるデザインで、とってもオシャレな装丁に包まれていたりします。「私のイラストを楽しんでほしい」という想いに基づいて作られてます。
もし、仕事の依頼を増やしたいのだったら、こういうものを作らないでください。
画集ではなくて「営業資料」「事業案内」を作ってください。
なんでかというと、ポートフォリオを渡す相手を考えてください。例えばクリエイターEXPOのような商談会だったり、なんかの交流会とかで、どこかの制作会社の編集担当の人に渡すものですね。
商談相手に「画集 = 絵を楽しむご本」を渡したって、なんの意味もないんです。
だって仕事の依頼くださいねって話をするんですから。相手は絵を楽しみたいのではなく、発注先を検討したいんですから。
だったら「事業案内」を渡して、こういう仕事をこういう条件で承っているので、ぜひ、って伝えるのがスジですね。
いやいや、すごく美しい装丁にしておいて、相手がイラストを見て感動してくれたら仕事依頼につながるかもしれないじゃないですか……みたいなこと言う人たまにいますけど、あなたがそういう仕事のゲットの仕方ができる立場かっていうと、申し訳ないけど疑問です。クリエイターEXPOとか営業の場では、求められているのはそういうことじゃないんです。
ポートフォリオ(作品集)に載せること
イラストだけを載せるのはダメ。では何を?
客はイラスト制作を依頼するときにどんな情報を知りたいと思うか?その情報をどういう風に伝えれば「このイラストレーターは信頼できそう」って思ってもらえるか?って考えると答えは人それぞれ見つかるはず。一般的にはこんな項目が挙げられます。
- プロフィール(経歴)
- 文章と情報
- 参考価格
- 依頼をもらってから納品までの流れ(タイムライン)
プロフィール(経歴)
連絡先(メールアドレス、電話番号、ウェブサイトのURLなど)は当然必要ですね。あとプロフィール書いてない人はあんまりいないですが、書き方に注意が必要です。
多くのイラストレーターが性格とかアートイベントのことを書きたがるけど、そうじゃなくて経歴にフォーカスしてください。理由とか詳しい書き方はいしつく!の教科書 3章を読んでください。
【3】仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう|いしつく! / イラストサイトのつくりかた|note
文章と情報
全てのイラストについてそれぞれ説明文を入れます。その仕事はどんな媒体のどんな企画での依頼で、どういう要求があり、どういう工夫をしました、ということを文章および表で書きます。
文章っていうと「その絵に込めた想い」みたいなポエム書き出す人いますけどそういう意味じゃないですよ?
自主制作のイラストであってもそれが仕事として発生したものだったらどうか、という目線で同じように書きます。
参考価格
ウェブサイト上には価格は載せないほうがいいけど、ポートフォリオだったらふつうは一般公開しないので参考価格として載せてもいい。
でもあくまで「参考価格」としておくのがいい。なぜならイラストの制作価格は一概に固定で決めづらいし、実際に受注した価格を正直に書く必要もないから。
依頼をもらってから納品までの流れ(タイムライン)
このイラストレーターに仕事頼もうと思ったらどういう感じになるの?がわかるように。仕事ってイラスト描くだけが仕事じゃないから、それがどういう風に進むのか説明しとく、ってことですね。
あとはやって好評だったのは、タイムライン。ってのは、仮にご依頼いただいたらこんなやり取りでこんだけの日数かかりますよ、みたいなシミュレーションをカレンダーにまとめた図。わかるかな?Excelで作る工程管理表みたいなの。
ポートフォリオ(作品集)を作るアプリは何がいいか
ポートフォリオって、きっと20〜30ページくらいの冊子になると思います。インデザ(InDesign)がベストですね。
イラストレーターなら大体Adobe CC入ってるでしょう。印刷すること考えると画質とか含めてちゃんと作っておきたいものです。イラレでやると一枚一枚なのでしんどいですしね。
無ければKeynoteやパワポでもまあ。ていうかイラストレーターなのにAdobe持ってない人、ぜひ買いましょう。
ポートフォリオをPDF化してウェブサイトで活かす
インデザでもKeynoteでも、ソフトによってやり方が若干違いますが、PDFとして書き出すことができます。
そうしてポートフォリオをデータ化しておけば、ダウンロードしてもらうことが可能になるってわけですね。そんならウェブサイト上で配布するのもいいですね。
だけど、ここに注意があります。誰しもがダウンロードできる形態にするのはダメです。なんでかっていうと同業者が見放題だし(競合に情報を与える必要なんてない)、「せっかくのチャンスなのにもったいない」から。詳しくは別記事で。
ポートフォリオの体裁(大きさや形)
ポートフォリオはサイズはA4、体裁はファイル(クリアブック)がベスト。これに印刷した紙を収納して渡すときはそれごと渡します。
ちなみにこれAmazonで探す単語は「クリアファイル」じゃなくて「クリアブック」です。「クリアファイル」は一枚だけ挟む薄いファイルのことだから。
何年か前まで、無印良品で、安くて透明ですごい使いやすいクリアブックがあったんだけど、たぶん廃盤なっちゃったんですよね。100均にも売ってますけど透明のやつってなぜかあまりない。ので↑のコクヨのやつは貴重。
一個の冊子にしておくよりもクリアブックに収納するほうがいいのは、依頼主が例えば大元との打ち合わせのときに、必要なところだけ取り出して持っていくとか色々用途が考えられるから。
体裁は、変に凝った形のはやめましょう。トレカみたいになってたりとか、ケース付きの冊子みたいなのとかね。それはもらった人が会社で収納しづらいという以上に、どうしても「画集」化するので仕事を引き寄せる力は低い。なのに制作費は高い。つまりコスパ悪すぎってことです。
ポートフォリオは、体裁に凝るより中身を考えるのに時間を使いましょう。
ポートフォリオをどこで印刷するか?
ポートフォリオを印刷するにはどうしたら? という話は別記事に書いたのでよろしければ。
こちらはポートフォリオを印刷すると、1冊あたりの制作価格がいくらになるか? 比較してみた記事もあります。
いしつく!の教科書
「仕事の依頼が来るポートフォリオサイトって、どうやって作ったらいいの?」
そんなイラストレーターに読んでほしい全5章のnoteマガジンです。専門用語はできるだけ使わずに書きました。
目次 & 概要
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まえがき 9割のイラストサイトは仕事の役に立っていない
そもそもウェブサイトを仕事に役立てること自体が無理なのでは?そう思っているかたに、私の体験をお話しします。まえがきを読む » -
第1章 イラストサイトに仕事の問い合わせが来ないのは、こんな勘違いをしているから
「作品ギャラリー」を作ろうとしたり、ウェブサイトなんか活用できないものと思い込んでいたり。よくある勘違いを挙げました。1章を読む » -
第2章 仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦
どう作り、どう利用していくべきか、という全体の作戦をお伝えします。いちばん大切なのは、信頼を得ること。バズや過剰なアクセス稼ぎは要りません。2章を読む » -
第3章 仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう
ドメインやサーバー、コンテンツの用意のしかたを解説します。プロフィール文の改善例や、イラスト画像の準備のポイントなど。3章を読む » -
第4章 仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例
実際に運営されているウェブサイトのレイアウトとページ構成を解説します。なぜそのようになっているのか、デザインには理由があります。4章を読む » -
第5章 作ったあとどうする?上手な活用とは
ウェブサイトは作って終わりではありません。SEOについて、ブログのやりかた、営業メールの送りかた、現実の営業に活かしていく方法など。5章を読む »