「『イラストレーターになりたい』って知人に相談したら『絶対やめとけ』って言われたんだけど」という人に、プロのイラストレーターからメッセージを送ります。
いしつく! の代表は00年代にイラストレーター = 個人事業主として開業して、今はイラスト制作とウェブコンサルティングの仕事をしている人です。たぶんなんかお役に立てると思います。
「イラストでは食っていけないからやめとけ」は本当なのか
イラストレーターになりたいという人が相談してきたとき、かなり高確率で聞くのがこちら。
「知り合いに『イラストレーターになりたいんだけど』と相談したら、『イラストレーターなんて食っていけない人が大半なんだからやめなさい』って言われました」
この「イラストレーターは食っていけない」ってやつ、私が個人的に知っているプロのイラストレーターを見るかぎり、そうでもないのになって思います。
食っていけてるイラストレーター像
私の先輩イラストレーターさんを思い返してみると、長く仕事をしている人が多くて、ボランティア活動をやる余裕があったり、家族を養っている父親もいますよ。
かくいう私もイラストレーター歴は15年を超えました。さして裕福でもないけど、ふつうに生活してます。車も持ってるし、猫も養ってるし、ゲームも好きなだけ買えてます。
食っていけてないイラストレーター像
ただ、「食っていけてない」イラストレーターも知ってます。そういう人は営業活動が嫌いかもしくは不得手なので、仕事はちょっぴりで、個展活動とかのほうに興味があるらしい。こちらは、バイトしてたり、家族に養ってもらえる立場(専業主婦)という人が中心。
誰も、イラストレーターの正しい姿を知らない
思いまするに、ですよ。
「イラストレーターなんてやめとけ」と言われて、腹が立ったり、モヤっとしているアナタ、相談した相手が悪かったと思うのですよ。
世間一般は、イラストレーターが何かなんてわかっていない
日本人のほとんどは勤め人です。世間一般の多くの人は、イラストレーターがどういう仕事で、どういう人たちなのかなんてわかってません。
「なんとなく」「イメージ」で、「なんか食っていくのが厳しいってヤホーずだ袋で見た」とかその程度の知識しか持ってない。
そんな誰かに「イラストレーターになりたいんだけど」なんて相談したところで、頭ごなしに「やめとけ」という回答が返ってくるのは当然です。
そもそも、イラストレーターとは?
イラストレーターとは、出版社や制作会社を相手に取引して、イラスト(挿絵)を納入する制作業者です。企業に勤めているイラストレータもいますが、割合としては少数派です。
って言ってみたけど、どの程度の仕事の量があるか、どんな内容の仕事してるかというと、イラストレーターによってまちまちです。
SNSでアカウント作って絵の投稿しかしてないひとが「私はイラストレーターです」って名乗ってたりもしますし。
前述の「食っていけてないイラストレーター」にしたって、本人はそれで納得して生きてるのだから、他人がとやかくいう資格はないですわね。
こんなふうに、イラストレーターとひとくちに言っても、いろんな立場、いろんな仕事、いろんな稼ぎの人がいます。なので、十把一絡げで「イラストレーターなんて」っていうのはめちゃくちゃ変なことだと思います。
会社員とは違って決まった給料がない = 不安定?
これはイラストレーターに限ったことではないけど、フリーランス/自営業者は、毎月決まったお給料がもらえるわけではない。これは確かです。
でもそれを理由に「イラストレーターなんて不安定だからやめとけ」というのは、ちょっと的外れな感じがします。
これはサラリーマンには理解できないことだと思うけど、自営業者/経営者には「失業」がありません。仕事がなくて失業状態であったとしても、自ら明示的に廃業しない限りは、「事業をやってます」という状態が続きます。
だから開店休業状態にならないように、うまく切り抜けながらやっていく、というのがイラストレーターをはじめとするフリーランス職業のキモです。
会社員だって、会社でサボってたら干されますよね? そもそも「何もしなくても毎月給料もらえる」って認識自体が間違いなわけですから、その点はフリーランスイラストレーターもそんなに変わらんよね、と思います。
自分の好きな絵を描きたいだけなら趣味にしとけ
フリーランスイラストレーターの仕事のキモは「開店休業状態にならないようにうまく切り抜けていくこと」と書きました。
具体的には、営業したり、ウェブサイトから仕事の依頼が来るように運営したり、新たな業態を考えたり、もしくは新たな事業に手を出したり、ってことです。
そーです。経営です。
経営がやりたくない人は、イラストレーターを目指すのはやめとけといいたいです。
自分の好きな絵を描いて、発表して、みんなに見てもらって褒められたいだけなんだったら、趣味にしておいたほうが幸せです。あるいは、アーティストと名乗って活動するか。依頼されて描くのは自由に描くのとは少し違いますから。
私はこの、経営込みのイラスト制作という事業そのものが好きです。もちろん、当初はイラストを描くのが好きだからイラストレーターになったのではありますけど、仕事っておもしろいな、と思いながら今に至りました。
でも常に絵ばっかり描いているわけではないです。文章とか企画書も書くし、イラスト以外の仕事もします。イラストを描く以外のことをしている時間のほうが多いです。
それがおもしろいと思えそうかどうか、がイラストレーターを目指していいか or やめとくべきか、の分かれ道だと思います。
学生がイラストレーターを目指すと「やめとけ」と言われる理由
学生の場合は話が別。学生はフリーランスイラストレーターになる前に、一度でいいから就職すべきです。
大学生だったら、新卒で就職するという、一生に一度の特権を利用しない手はない。新卒のチャンスを棒に振ってフリーランスイラストレーターになりたいって、それは私でも「やめとけ」って言うよ。
フリーランスイラストレーター ≒ 自営業者/経営者 です。しかも、独りです。仕事の責任を全て負います。
イラスト制作はお客様がいて成り立つ仕事なので、付き合い方、ビジネスの機微がわかってないとうまくいかないです。なので、少しも社会人経験がない人には厳しいです。
しばらく仕事をして、20代後半〜30代で独立するほうがいい。うまく行っているイラストレーターはだいたいそうです。
新卒で就職できれば、仕事というものについて教えてくれる先輩がいて、失敗しても大目に見てもらえて、しかも毎月給料ももらえるという、特権以外の何物でもない環境が手に入るのよ? なぜ使わない。
経験を積んで、お金が貯まったあたりで退社して夢を叶えればいいんだよ。それでも少しも遅くない。
イラストレーターは儲かるよ。
イラストレーター = 食えてなくて、貧乏で、辛い仕事
みたいな図式が広まってるとほんっとウンザリします。それがイラストレーターが低く見られる原因だと思ってるので。
「クライアントに修正ばっかりいわれて儲けがない」とか「足下見られて値切られた」とか「徹夜ばっかり」とかってTwitterでイラストレーターが愚痴ってるの見て「イラストレーターってそういうもんなんだな」みたいに思っている人もいるかもですけど、そういうのって全部、その人自身のせいですからね。
価格交渉も契約書もなしに言われるがままに引き受けたり、安くて責任の少ない仕事ばっかりに手を出しているからそうなるんです。
それがイラストレーター像だと思ってたら、そりゃ「やめとけ」と言われますわな。
でもそういう愚痴ネタの仕事を回避して、ちゃんとした取引だけをやっていくならば、イラストレーターの仕事って素晴らしいです。間違いなく世の中になくてはならない仕事のひとつだし、自分の名前が書籍の奥付に残るって本当に嬉しいです。
ちゃんとした仕事だけをやっていけば、イラストレーターの仕事は十分儲かります。一回で100万円超える取引だってざらにあります。
ポイントは、いい取引、食いっぱぐれのない仕事を見つけることです。
とにかく、やり方次第ってことです。
これからは、
イラストレーター = 真っ当で堅実な職業のひとつ
って言われるように、私もがんばりマッス。
いしつく!の教科書
「ポートフォリオサイト、自作してみたけど、仕事依頼なんて一回も来たことない」
そんなイラストレーターに読んでほしい全5章のnoteマガジンです。専門用語はできるだけ使わずに書きました。
目次 & 概要
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まえがき 9割のイラストサイトは仕事の役に立っていない
そもそもウェブサイトを仕事に役立てること自体が無理なのでは?そう思っているかたに、私の体験をお話しします。まえがきを読む » -
第1章 イラストサイトに仕事の問い合わせが来ないのは、こんな勘違いをしているから
「作品ギャラリー」を作ろうとしたり、ウェブサイトなんか活用できないものと思い込んでいたり。よくある勘違いを挙げました。1章を読む » -
第2章 仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦
どう作り、どう利用していくべきか、という全体の作戦をお伝えします。いちばん大切なのは、信頼を得ること。バズや過剰なアクセス稼ぎは要りません。2章を読む » -
第3章 仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう
ドメインやサーバー、コンテンツの用意のしかたを解説します。プロフィール文の改善例や、イラスト画像の準備のポイントなど。3章を読む » -
第4章 仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例
実際に運営されているウェブサイトのレイアウトとページ構成を解説します。なぜそのようになっているのか、デザインには理由があります。4章を読む » -
第5章 作ったあとどうする?上手な活用とは
ウェブサイトは作って終わりではありません。SEOについて、ブログのやりかた、営業メールの送りかた、現実の営業に活かしていく方法など。5章を読む »