イラストレーターのためのウェブサイト作成ポイント:仕事の依頼が来るための七か条

私はイラストレーターとして独立したとき、コネもなければ同業仲間もおらず(つるむのが苦手で…)、おまけに地方在住で貯金も微々たるものでした。だけど、ウェブサイトの作成方法を知っていたおかげで、有名出版社や有名企業から依頼を頂けるようになりました。

イラストレーターが仕事の依頼をゲットしたければ、SNSにイラストを投稿するばかりではだめです。営業ツールとしてのウェブサイトを持ってください。ただ、ウェブサイトを作成してはみたものの仕事の問い合わせが全然来ない、どうして?と思っているイラストレーターも実はかなり多いのです。

仕事の依頼が来る「ちゃんとした」ウェブサイトの作成方法を知りたい方へ、七つのポイントを教えます。

一. ギャラリーを作るな、「企業サイト」を作れ

イラストレーターは基本的に「私の絵を見てほしい!」ということばかり考えているので、そのままウェブサイトを作成し始めると「ギャラリーサイト」が出来上がります。

ギャラリーというのは、絵を鑑賞して楽しむ場のことです。

それが悪いというわけじゃないですが、ギャラリーサイトを作っても仕事の依頼は来ません。なぜなら、訪問者はイラストを鑑賞して満足したら去っていくだけだからです。ギャラリーってそういうものですし。

ウェブサイト作成の前に何か参考になるものがほしいのだったら、企業のウェブサイトを見て研究してください。間違っても、同業者の友達のウェブサイトは参考にしてはいけません。最近はちゃんとしたウェブサイトを作っているイラストレーターも増えていますが、まだまだギャラリーサイトや個人サイトが優勢ですからね。

企業のウェブサイトは、自分たちがどんな事業をしていて、どんな価値を提供できるかを伝えようとします。製品カタログをダウンロードできたり、受注窓口の問い合わせフォームを備えています。そして当然のことながら独自ドメインを使っています。

二. 情報が主役、イラストは脇役

ウェブサイトで作例ページを作成するときは、イラストを貼るだけではなく、そのイラストを受注したのはどんな媒体のどんな依頼で、そのときかかった日数はこんくらいで、制作にあたって工夫したところや反響はこんなので、という情報を載せましょう。画像より文章が大切です。

イラストは脇役です。イラストは鑑賞してもらう対象ではなく、あくまでサンプルです。「実際に仕事を頼む際に参考になるサンプル」です。

イラスト制作の仕事を受注すると、自分が提示したサンプルと全く同じモチーフを全く同じ条件で描く、ということはほぼありません。お客様があるイラストを見て「これとおなじ感じで描いてほしい」と言ったとして、その時と全く同じ金額、全く同じ納期で受注するとは限らないし、タッチを近づけてもモチーフが違えば結果は違うものになって当然です。

というわけでサンプルはあくまでサンプルです。イラストそのものが商品だと考えるとどんどんギャラリー化していきます。そうじゃなくて、そのイラストを描いたとき、それがどんな条件のどんな仕事だったか、という情報が主役なのです。

制作会社の中の人がその情報を見て「あ、このイラストレーターはちゃんと仕事する人だな」と思う。そのことが仕事の依頼を引き寄せます。絵自体が引き寄せるのではないのです。その理屈をウェブ戦略として活かすことが必要です。

【2】仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦|いしつく! / イラストサイトのつくりかた|note

三. 実名、屋号、居所を明かせ

もしも企業のウェブサイトが、会社の本当の名前も、社長の名前も、オフィスの場所さえも一切掲載していなかったとしたら、それを見た人はどう思うでしょうか?

「あやしい」。このひとことに尽きるのではないでしょうか。

でも不思議なことに、イラストレーターの多くが「あやしい」存在になろうとします。実名の代わりにTwitterのアカウント名を書いたり、それが屋号なのかペンネームなのか判然としなかったり、かたくなに住んでいる地域を隠そうとしたりします。それは大きな間違いです。

正しく自己紹介できない人、どこの誰だかイマイチよくわからない人に、まともな企業が依頼を寄越すわけがありません。きちんと名乗ることは信頼を得るための基本中の基本です。

なので、企業と取引できるイラストレーターになりたかったら、ウェブサイトには実名も屋号も載せてください。住所は番地まで書かなくても良いですが(自宅兼事務所なので、と断りを入れれば気分を害する人はいません)、市町村くらいまでは書きましょう。

四. 問い合わせフォームは複雑なほうが良い

問い合わせフォームの項目を「名前、メールアドレス、自由記入欄」の3つだけにしておくのは良くありません。メールアドレスを載せておいて「ご依頼はこちらに」とした場合も同じです。迷惑な営業メールや、一般人からのファンメールが来ます。

たまにTwitterで、そのことを愚痴っているイラストレーターを見ます。ばかげていると思います。そういうウェブサイトを作ったのは、自分自身なのにね。

問い合わせフォームは複雑なほうが良いです。イラストのタッチや納期や、希望の価格までアンケートのように尋ねるようなものが正解です。フォームに書いてもらった内容をもとに即座に見積を返せるくらいなら最高です。

「客が入力が面倒がって依頼が来なくなるのでは?」という疑問は的外れです。というのは、広く世に出る媒体の仕事の場合、依頼が来る時点ですでに企画はスタートしていて、お客様も細かい要望を持っているからです。

問い合わせフォームを複雑化=最適化すると、個人からの依頼や逆営業は格段に来にくくなります。

【4】仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例|いしつく! / イラストサイトのつくりかた|note

五. ブログは日記ではない。お客様に向けて書け

ブログに日記を書いても仕事にはつながりません。それでも日記を書きたがるイラストレーターの言いぶんは「私の人間性をちょっとでも知ってもらいたいから」ですが、ビジネスでいう人間性というのは仕事を間違いなく遂行してくれる誠実さという意味であって、誰も個人の日常を知りたいとは思ってないのです。

ブログには、お客様の役に立つ情報を書きます。イラストを依頼する側の人、例えば制作会社や出版社にお勤めの方などでしょうが、そういう人たちでも必ずしもイラスト制作についてすごく詳しいわけではありません。新卒で制作部に配備される人もいます。

そういった人たちから依頼が来るわけなので、その人たちの知りたいこと、役に立つことを書くのがブログの使い方の正解です。イラスト制作を依頼するにはどうしたらいいのかというノウハウを提供すれば、その人たちからの信頼を得られるでしょう。

イラストレーターさんのための、仕事につながるブログの書き方|いしつく! / イラストサイトのつくりかた|note

六. 「SEO」は単なるアクセスアップではない

ブログには仕事のノウハウを書きましょう、というのを曲解して、イラストの描き方やイラストの売り込みの仕方などを一生懸命書いているイラストレーターがいます。彼らの言いぶんは「検索数の多いワードだからSEOになる」というものですが、それはちょっと、SEOを勘違いしてるんじゃないかな。

何が勘違いって、アクセス数を多くすれば自然と依頼も増えるはず、というのが勘違いです。一時的にアクセス数を増やせたとして、訪問した人の大半が同業者ならば、仕事の依頼は全く来ません。

本来SEOとは、「こんな人が訪問してほしい」と思うターゲットが自分のウェブサイトを訪れてくれるように仕向ける行動です。イラストレーターが仕事を増やしたいと願うならば、来てほしいのはお客様候補の人々です。だから「お客様に向けて書け」なのです。なんでもいいからとにかくバズれ、というのはSEOの本質を大きく外しているし、仕事を増やす効果もありません。

ところで、「イラスト描き方」系の記事はびっくりするほどパクられやすいです。アクセス数だけ追いかけていると、あなたが書いたのによく似たブログ記事があちこちに量産されるだけでまるで仕事は増えないという、よくわからない結果が待っています。

七. ウェブサイトは、育ててナンボ

ウェブサイトは作って終わり、ではありません。むしろ完成したときがはじまりです。

たとえば制作実績を追加していく・ブログを書く・その時々のお知らせを追加する、などの更新がもちろん必要ですが、ウェブサイトを「育てる」というのは単なる更新作業だけのことをいうのではありません

自分でデザインを考えた場合は、本当にこれでよかったのか、という検証がいります。お客様が本当に目的の情報や問い合わせフォームにたどり着けているのか、など。ウェブデザインは改善とセットなのです。

また大切なのは、お客様とつながりを保つことです。ウェブサイトを見てくれた人、問い合わせをくれた人との関係を育てる。イラストレーターは作品を見てもらうことばかりに興味が行きますが、その後のことの方が大事です。

単なる訪問者は用事が終われば去っていくだけですが、メールアドレスを入力していただくことができれば関係を育てることができます。なお、欲しいのは一般人や同業者との関係ではなく、お客様になる可能性のある人たちとの関係です。どうかお間違えのないように。

【5】仕事の取れるイラストサイト。作ったあとどうする?上手な活用とは|いしつく! / イラストサイトのつくりかた|note

以上、要点だけお伝えしました。仕事の依頼が来るウェブサイトの作り方は、語り出せば本が一冊か二冊書けるくらいのノウハウになってしまいますので、もっと詳しく知りたい方はnote「いしつく!の教科書」を読んでみてください。

いしつく!の教科書

「ポートフォリオサイトで仕事依頼が来るって、ほんとにそんなこと可能なの?」

そんなイラストレーターに読んでほしい全5章のnoteマガジンです。専門用語はできるだけ使わずに書きました。

目次 & 概要

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