イラストレーターさんのための「開業届」の出しかた。青色申告との関係は?

いしつく!のメンバー様でこれからフリーランスのイラストレーターとして開業します!ってかたがいらっしゃったので、応援したくてこの記事を書きました。

今までお会いしたイラストレーターさんの中には「開業届って何ですか?」なんてことを言っている人もいましたけど、仕事としてイラストを描いていくつもりなら必要なことだから、ぜひ読んでみてね。

開業届って何?

開業届とは「新たに事業を始めましたよ〜」という手続です。税務署に提出します。イラスト受注制作のお仕事も「事業」に当てはまるよ。

詳しいことは、国税庁のウェブサイトを見てみよう。
[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|所得税|国税庁

開業届って、必要なの?

開業届を出しているフリーランサーの割合
開業届を出しているフリーランサーの割合(Facebookでのアンケート/サンプル数17)。

開業届を出していないフリーランスの人もいます。
Facebookで多業種のフリーランサーにアンケートしてみたところ、およそ2割のかたが「開業届を出していない」ということでした。イラストレーターさんに限れば、もう少し多いだろうね。

「事業を始めたら、届けを出さなくてはならない」とは、所得税法っていう法律に書いてあります。

所得税法第二二九条(開業等の届出) 居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。

かといって開業届を出さないまま仕事を引き受けたからって、別にお咎めがあるわけじゃない。ただ、所得税は払わなくちゃいけないですね。

開業届も確定申告も出していなくたって、ある日税務署からお尋ねが……ってことはあるのかもしれない。なぜなら、取引先さんには「このイラストレーターに報酬をいくら払ったよ」という記録が残っているはずだから。税務調査とか突然言われて肝を冷やすかもしれないくらいなら、自分から届出しておくほうがいいように思うんだけど、どうかな。

開業届の出しかた

フリーランスイラストレーターのための開業届の出しかた

国税庁のウェブサイトに届出用紙のPDFファイルがあるので、これをプリントして記入して、お住まいの町の税務署に提出すればOK。
[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

手数料は、かかりません。
会社の登記はいろんな手続きがあるけど、個人事業主の開業は本当にシンプル。

ひと昔前の話になっちゃうけど、私が開業届を出したときは郵送で済ませました。切手付き封筒を入れて「控えを返送して欲しいです」って書いた送り状を添えて送ったら、ちゃんと返してくれたよ。

ただ、今はマイナンバーの記入が必要なので、身分証明書のコピーか提示を求められるもよう。税務署に確認してみてね。

開業届の日付のはなし

フリーランスイラストレーターのための開業届の出しかた

開業日を、覚えやすい日や記念日にあえて設定するのもいいかも。
私は、開業日を誕生日にしました。そのせいか、毎年の誕生日が仕事と生き方を考える日みたいになっていて、個人的にはよかったな〜って思ってます。もともとあんまり誕生日に浮かれたりしないほうだしね。

じつは実際に開業届を提出したのは誕生日その日じゃなくて、一ヶ月以上すぎてから。所得税法に「開業の事実があってから一ヶ月以内に」って書いてあるので、一ヶ月以内の日付じゃないと受け付けてもらえないのかな?と思いきや、別にそんなことはないらしいです。

ただしルールがあるのかもしれないので(そしてこの後の青色申告の話にも関わってくるので)、やっぱり詳しくは税務署さんに聞いてみよう。

開業届と「確定申告」の関係とは?

「確定申告」は、事業をしている人は誰しもやらなきゃいけないのです(ただし所得額の下限はある)。開業届を出しているかどうかは関係ない。でないと脱税になっちゃうかもしれないから。

確定申告とは、あなたが払うべき所得税の金額を正しく申請する手続きです。それには、前の年に稼いだ金額を元に計算をします。

イラストレーターさんの取引先さんの多くは出版社や制作会社だと思うけど、多くは、報酬の振込のときに所得税をあらかじめ天引きします。そのままだと所得税を払いすぎた状態かもしれないので、「経費とか差し引いたらそこまで儲かってませんでした。だから返してくださ〜い」と、根拠を添えて報告しなきゃいけませんのね。それが確定申告。

これがまた、けっこうバカにならない金額だったりする。だから、開業届を出すかどうか以前に、確定申告をしないとすげー勿体無いかもしれないのです。

開業届を出すと、次の確定申告の時期からは書類のセットが送られてくるようになります。

(最近はオンライン申請推奨です。e-Taxを使うと、書類じゃなくてお知らせハガキだけが届くようになりました。2021年追記)

じゃあ、開業届と「青色申告」の関係は?

フリーランスイラストレーターのための開業届の出しかた

よく聞く「青色申告」って?何が美味しいのかというと、控除額が大きいので税金を安くするチャンスがあるってこと。
所得税の計算をするときに所得をなかったことにする項目「控除」ってのがあるんだけど、青色申告特別控除といって、条件を満たせばなんと最大65万円をなかったことにできる=税金を安く済ませられる、という制度があるのです。
※税金が65万円安くなるって意味じゃないぜ。税額計算の根拠になる所得額が減るってこと

No.2072 青色申告特別控除|国税庁

ただし青色申告したいなら、事前に申請書を出しておかなければなりません。期限はその年の3月15日または事業開始日から2ヶ月ってことなので、もし間に合わなかったら、来年の確定申告は白色申告、青色申告は再来年からってことになりますね。

申請書の出しかたはこちら。
[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

開業届を出さないで青色申告承認申請だけ出すのは、アリなのか?おそらくナシ。青色申告承認申請ができるのは事業を始めた人が前提だから、開業届も出すように言われるんじゃないかな。確認してないけど、たぶんそんな感じっぽい。

青色申告で行くって決めてるなら、開業届を出すときに一緒に青色申告承認申請書も出してしまえばいいと思います。

青色申告をするなら帳簿をつけなきゃね。なぜなら「ちゃんとした帳簿をつける」ってのも青色控除の条件のひとつだから。
それには青色申告対応の会計ソフトを使うのが確実でしょう。イラストレーターさんはMacの人が多いと思うので、あえてひとつオススメするなら「MFクラウド」かな(まぁどれも一長一短あるけど……)。

青色申告承認申請を出すと、いろいろサポートのオススメも税務署経由で送られてきます。税理士さんの無料相談とか、青色申告会のお知らせとか。帳簿とかやったことないからよくわからん!って人は積極的に使っていくといいと思うよ。

お勤めのかたは、開業届を出すなら退職後がいいかも

お勤めのかたはちょっとご注意。開業届を出した状態では失業保険が出ないそうです。仕事をしながら独立の機会を狙っているイラストレーターさんは、開業届を出すのは退職してからにしたほうがいいかもしれない。この辺はハローワークに聞いてみるのが良さそうですね。

私はイラストレーターになりたくて何年間か悩んだのちに開業しました。開業届を出したときは「これで名実ともにイラストレーターなんだーっ」という嬉しさとともに、ちゃんとやってかなきゃいけないなって身の引き締まる思いもしたもんです。

これからイラストレーターとして開業するみなさん、どうかお仕事がうまくいきますように。
例によってえべっさんを呼んでおきますね。商売繁盛で笹もってこい!

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