出版社の社長曰く「やたら凝ったイラストポートフォリオはもらっても困るだけ」

私が何度かイラストでお手伝いをしている、とある出版社があります。面白い本を作り続けている、小規模ながら力のある出版社です。その社長と先日打ち合わせでお会いしたとき、こんなことを仰っていました。

うちの会社にもイラストレーターがポートフォリオを送ってくることがあるけど、やたらと凝ったアート作品的なイラストばかり載せてあるやつが多くて、困る。

俺の渾身の作品を見ろ!ってつもりなのだろうけど、そんなに凝ったイラスト、値段も納期もどんだけかかるんだって思ったら、とてもじゃないけど発注できんわ。

じつはこうした話を聞くのは初めてではありません。編集者さんや制作会社のデザイナーさんから、同じようなことを言われたことは他にも何度かあります。

社長からは「その点あんた(筆者)のポートフォリオは現実的なイラストが中心だし情報量も多いから助かるわ……」ってお褒めに預かり光栄です☆とその場は丸く収まったのですが、後日この話を後輩ちゃんにしてみたら、「うーん」って考え込んじゃったのです……。

イラストレーターはなぜ、ポートフォリオに凝った絵ばかり載せてしまうのか?

後輩ちゃんのポートフォリオも、凝ったタイプの絵ばかり載せたものでした。まさに、社長が言うところの「困るポートフォリオ」ですね。

後輩ちゃんになぜ凝った絵ばかり選ぶのか聞いてみたところ「俺の渾身の作品を見ろ!」だなんて、そこまで大それたことを思っているわけではないというんです。

ただ「凝ったイラストが描けるということは、もうすこし手数の少ないかんたんなイラストも描ける」って向こうが判断してくれるはずだから、できるだけ手数と時間のかかるイラストを優先して選んだとのこと。

「『どうか、私のMaxの力を見てください!』ってアピールしたくって……」って言ってました。

なぜ凝った絵ばかり選んではいけないのか?–プロ脳から離れよう!

イラストレーターさんに悪気が全くないことは、わかりました。自分の力をより良く見せようとしているにすぎないんです。だけど実際には残念なミスマッチが起きている。冒頭の社長に凝りすぎポートフォリオを送付したイラストレーターさんは、ここから仕事を頼まれることはもう決してないでしょう。

では、なぜミスマッチが起きてしまうのか?それは、イラストレーターさんが仕事を頼む側の人の目線を意識しなさすぎ、だから!

その代表格が、後輩ちゃんの言う「凝ったイラストばかり載せておけば『これよりも手数の少ないタッチの絵も描けるはずだ』って、向こうが自動的に判断してくれるはず」という勘違いです。

その判断ができるのは、絵のプロだけです。いや、正確にいうと本人だけです。

だもんで、凝った作品ばかり選りすぐって載せたポートフォリオは、それしか描きませんって言ってるとの同じことになっちゃう。それで仕事のチャンスが減りお金が遠ざかってしまうわけですね。

ポートフォリオを渡す相手って、絵のプロじゃないんですよ。え?って思った人、いるかもしれません。編集者さんとかディレクターさんとか、イラストレーターを使う側の人ってみんなイラストについては超詳しいんでしょ?って。それは偏った見方です。そんな人ばかりじゃありません。むしろイラストのプロでないから外注をするんですよ。だから「勝手に判断」はないものと思っておいたほうがいい。

ではどうしたらいいのか?–ポートフォリオは「バランス良く、情報中心、シンプル」

「じゃあどうしたらいいの?」おー、そうこなくっちゃ!
誰が見ても「このイラストはこんな場面に使えそうだ」ってすぐわかるように、現実に即して作ればいいんです。

バランス良く

まずは、いろんなタッチを載せよう

メルヘン系からオタク系まで節操なく描け!……とかそんな無茶を言ってるわけじゃあござんせん。あなたの絵の良さを残したまま、もっと手数と時間が少なくて済む描き方はありませんか?そういうイラストも、ちゃんと載せましょう。なかったら開発しましょう。

手っ取り早いのは実際に仕事でやったイラストを載せること。「この時のイラストはいっぱい直しも入ったし時間もギリギリで、イマイチだったなぁ」とか思っていても、依頼してくれる方はそっちを重点的に見てくれていることが多いですよ。

自由に作った渾身の作品よりも、仕事で納期に追われながら描いたイラストのほうがある意味力があったりする、という事実……!

情報中心

冒頭の社長の言葉から。

そんなに凝ったイラスト、値段も納期もどんだけかかるんだって思ったら、とてもじゃないけど発注できんわ。

つまり裏を返せば、納期や値段が明らかならば発注できるのに、ってことですね。

そのイラストをもし仕事として発注したら、値段はどのくらいで、制作時間はどのくらいかかるか?って情報をイラストには添えましょう。

もし仕事の経験がなくても「わからないから」とか言わない。わからないなりに数字にして表現することが大事。そこから相談を始められるからです。書いてあるのとないのでは大きな差がありますよ。

シンプル

最後に、ポートフォリオの形状についてまとめます。

  • A4で20ページくらいの透明のファイル、普通のやつにしておく。凝った形状はお金がかかるばっかりで不評極まりない。
    社長曰く「収納しにくい。デカいやつから順に捨てる」
  • PDFデータ版も用意しておく。ポートフォリオの収納棚を持たず、サーバーコンピュータ上で管理している制作会社も増えている。
  • ただし同じデータでも、CD/DVDなどポータブルメディアにデータを入れて送りつけるのはNG。社長曰く「わざわざ再生してまで見ないわー」

イラストレーターさんってとかく「イラストを見てもらったらわかるから」「イラストが勝手に語るから」って思ってしまいがち。だからイラストのクオリティを上げるのには必死になれるんだけど、それ以外のことには目が向かない人が多い。これがもったいない。

商品がどれだけ素晴らしくても、その良さを言葉で伝えないかぎり、良さは伝わらない。イラストだって同じです。

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