仕事の代金を請求するときのお話。「フリーランスって、消費税分も請求していいの?」ってちょくちょく周りで話題になる。
「年間売上が1000万円超えてないフリーランスは、請求のとき消費税を乗せちゃいけない」とかって聞いたことない?答えを先に言っちゃいますが、それは大間違い!フリーランスのイラストレーターさんも、消費税を請求しましょうね。
消費税がかかるのはどんなときなのか?答えは「国内の事業」。つまり?
さて、そもそも消費税はどんな時に請求していいのか?それを知るために、国税庁のウェブサイトを読んでみましょう。こんな風に書いてあります。
消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供と外国貨物の引取りです
»引用元:No.6101 消費税のしくみ|消費税|国税庁
言い回しがなんかややこしげですが、めっちゃざっくりいうと
「日本中の商売ぜんぶ、あと輸入とかも」
ってこと。
商売ぜんぶ、ってことはイラストレーターがサービス(やモノ)を有料で提供したら消費税をとっていいってこと。
上の引用文でいうと「事業者」がイラストレーター、「対価を得て行う」「役務の提供」ってところが仕事内容を表してます。役務の提供=イラストの受注&制作、対価=報酬、ってことですね。
相手が企業でも個人でも、消費税は請求していいんです。請求しましょう。
売上1000万円がどうの、は根拠がない変な話。
じゃあ「年間売上が1000万円超えてないフリーランスの人は消費税を請求してはならない」とかいうのは、一体何なの?
その根拠とされるのは、受け取った消費税を納める時の話。売上高が1000万円を超えない事業者は消費税を納めなくていい、という規定です。どうせ納めないなら、請求を断ってもいいんじゃね?という発想で出てきた言い分です。
が、これは何の根拠にもなりません。
嘘だと思うなら消費税法を読んできて。ネットで全文読めるから。「売上が○○円以下の事業者は消費税を請求してはならない」なんてどこにも書いてないよ。
年間売上額を根拠に消費税の請求を断るのは、実はめっちゃ変な話なんです。
例えば、あなたがコンビニで買い物をするとき、もしも店員さんに向かってこう言ったとしたら、どうだろう。
「おたくヒマそうだし、売上1000万円超えてないだろうから、消費税分は払わなくていいよね?」
店員、「ハァ?」ってなるでしょ?
「そんな奴はおらんやろ」と思っただろうけど、「フリーランス・個人には消費税分は払わない」ってのはこれと同じことなんですよね。
ぶっちゃけそれは「値引き要求」です
ぶっちゃけた話、「フリーランスは消費税を請求しないで」って言われたら、それは値引きを強要されているのとイコールだと思ってもらってOK。
だって本来請求すべきものを請求するなってんだからね。しかも値引きの理由が「売上がそこまででもない」なんだから、ホント言いがかりだわ〜。
なんですけどね……、残念ながら、理解していないフリーランサーさんも結構多いんです。
イラストレーターさんやライターさん、デザイナーさんなどフリーランスが昔から多く活躍してる出版業界なんかでは間違った認識が一部では伝統的にまかり通ってて、フリーランスの側にも
「取引先からいつも『フリーランスは消費税請求するな』って言われてるから、そういうもんだと思ってた」
なんて平気で言っちゃう人も。何だかなぁ。
「フリーランスは消費税の請求お断り」と言われたら、どうしたらいい?
だけど実際、自分が言われてしまったら、どうしたらいいんだろう?
大丈夫!落ち着いて、話を通せばいい。
私は、そういう時「うちはどなた様からも消費税は頂戴していますので」って言います。または「結構儲かってて」って感じの話をします。嘘はよくないけど、ぶっちゃけ向こうがこちらの売上を調べるすべもないからね。
これでほぼ通ります。
そうなのさ。通るんですよ。そんなに簡単に通るんですよ。つまりね、取引先さんもだいたいわかってやってるわけよ。ホントはこういう値引きのさせ方はいけない、ってね。
もし、それでもダメだったら……私はダメだったことはないけど、そうなったらたぶんそことはもうお付き合いしないかなぁ。
まあ、そもそも、こっちが気を遣って交渉しなきゃいけないなんておかしいんだけどね。だって本来、請求して当たり前のもんなんだから。
ただ、もっとラクにしようと思ったら、取引がはじまるまでにヒトコト伝えておくこと。
契約書とか受発注書のテンプレのどこかに入れておく、とかね。私は問い合わせフォームに同意事項欄(読んでチェックを入れてくれたら送信できるよ、という仕組み)を設けていて、その中に「消費税頂戴しますのでご了承ください」的な一文を入れてあります。
あとは初回の打ち合わせで必ずギャラの話をすると思うので、その際にさらっと伝えとくとかね。
追伸 その1 :
出版系フリーランスの労働組合「出版ネッツ」が「払ってますか?消費税」というリーフレットを発行しました。イラスト入りですっごいわかりやすいから、いちど読んでみて。ここに挙げた以外にも交渉の例が載ってます。主に出版社さんや編集プロダクションさんに宛てた内容になってるから、お客さんが読むであろうブログなんかでシェアしておくといいかもね。
»出版ネッツ » リーフレット「払ってますか? 消費税」
「もらうだけもらうなんて」とか思う必要もない
フリーランスの消費税の話になると
「もらうだけもらって納めないなんて、なんか悪いような……」
なんて言い出す人が必ず出てくるんだけど、それもまたズレてる話。
だって、これって単に制度の話だから。
フリーランスが消費税を請求したからって、まるっぽ得してるなんてことはないんですね。そもそも仕事の遂行には画材とかの経費が必要で、これには消費税がかかる。それを仕事を請け負った先に転嫁する。その取引先はまたそのお客さんから消費税をとる。ほんで最終的な消費者が平等に負担する。この流れが消費税というシステムそのものだからです。
また納めるときの話。事業者は毎年、消費税を納めるべき金額を計算して税務署に報告しないといけないわけですが、フリーランサーさんなど一部の業者は特別にその手続きが免除されています(「免税業者」っていいます)。「納めなくていい」にフォーカスしがちだけど、要点は「手続きが免除されてるよ」ってとこです。
消費税を納める金額は預かったぶんと払ったぶんの差し引きで決まるので、その年の売上など条件によっては還付(お金を戻してもらう)が発生します。
だけど、免税業者は手続きが必要ないかわりに、還付も受けられない決まりになってます。つまり、もしもその年の売上がうんと少なくても、経費や仕入れで払った消費税額が計算上払いすぎであろうとも、戻ってはきませんよ、ってこと。ここでも、消費税を納めないからって得するとは限らないんです。
まぁやっぱ日本の制度ってのはちゃんとできてるよね。そんなに簡単に得はしないっていう(笑)。そして謙遜したからって制度が変わるわけでもないんで、イラストレーターさん、フリーランサーのみなさん、消費税は堂々と請求しましょうね。
追伸 その2 :
もし、取引先に消費税の請求を断られて、ちょっと悪質だわぁと思われるような感じだったら、公正取引委員会に報告してみたらいいと思うよ。個人の報告がきっかけで企業に行政指導が入ることもちゃんとあるみたい。詳しくは公取のウェブサイトを見てみて。匿名でもOKとのこと。
»消費税転嫁対策コーナー:公正取引委員会
(市役所や商工会議所で窓口を設けているところもあるようですよ。お近くの機関をチェック)
いしつく!の教科書
「仕事の依頼が来るポートフォリオサイトって、どうやって作ったらいいの?」
そんなイラストレーターに読んでほしい全5章のnoteマガジンです。専門用語はできるだけ使わずに書きました。
目次 & 概要
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まえがき 9割のイラストサイトは仕事の役に立っていない
そもそもウェブサイトを仕事に役立てること自体が無理なのでは?そう思っているかたに、私の体験をお話しします。まえがきを読む » -
第1章 イラストサイトに仕事の問い合わせが来ないのは、こんな勘違いをしているから
「作品ギャラリー」を作ろうとしたり、ウェブサイトなんか活用できないものと思い込んでいたり。よくある勘違いを挙げました。1章を読む » -
第2章 仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦
どう作り、どう利用していくべきか、という全体の作戦をお伝えします。いちばん大切なのは、信頼を得ること。バズや過剰なアクセス稼ぎは要りません。2章を読む » -
第3章 仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう
ドメインやサーバー、コンテンツの用意のしかたを解説します。プロフィール文の改善例や、イラスト画像の準備のポイントなど。3章を読む » -
第4章 仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例
実際に運営されているウェブサイトのレイアウトとページ構成を解説します。なぜそのようになっているのか、デザインには理由があります。4章を読む » -
第5章 作ったあとどうする?上手な活用とは
ウェブサイトは作って終わりではありません。SEOについて、ブログのやりかた、営業メールの送りかた、現実の営業に活かしていく方法など。5章を読む »