イラストレーターやクリエイターのポートフォリオサイトのフッター(ページの一番下の部分)に入れるコピーライト、著作権表示はどう書いたらいいの?という話をします。
どこのサイトを見ても書いてあるから、きっと必要なものなんだろうと思って私も書いてたし、多分そういう人がほとんどだと思う。けどアレってそもそも何なの?とあらためて調べてみると、じつは別に要らないものなのでした。
© の著作権表示は、不要である
著作権表示・コピーライト表記とは、発行年や著作者を表したもの。そもそもこれって何者なの?
© の著作権表示は慣習によるもの。本来は必要ない
知らなかった人はちょっとびっくりしたでしょ。なぜコピーライト表示が不要なのか? その根拠は、著作権の取り扱いを定めた条約「ベルヌ条約」にあります。
文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約 – Wikipedia
めっちゃカンタンにいうと、ベルヌ条約加盟国においては、著作権は何も手続きしなくても有効になるから (無方式主義という)。ベルヌ条約には日本も加盟しているよ。
だからウェブサイトに書いておくとかの「宣言(=手続き)」もいらないのです。
じゃあ、なぜウェブサイトに著作権表示をするのか?
それはやっぱし、慣習だから。
- あったほうがちゃんとしてるっぽい
- あえて書いて宣言しときたい
- 無いと客や上司がツッコミ入れてくるから
ほんとうにそれだけの理由。
あと他人の著作物を自分のウェブサイトなどに載せるときに、敬意や感謝の意味で © を書いたりもしますね。とにかく著作権表示は気持ち的なもの以外の何物でもないんです。
(不要だけど)著作権表示の正しい書き方
逆にいうと「著作権表示を書いてはならぬ」という決まりもないんだから、あえて入れておこうか、という判断もアリ。
その場合はいちおうルールってものがあるので、則るようにしましょうか。
必要な表示は3つ (wikipedia: 著作権表示より引用)。
- ©(丸の中にC、丸C、マルシー)の記号 (symbol ©)
- 著作権者の氏名 (name of the copyright proprietor)
- 最初の発行の年 (the year of first publication)
© (丸の中にCマーク)は、 (c) でも Copyright(c) でもなく © を使うこと。HTMLで表示する際は、こうです。
©
著作権者の名前は「氏名」ってルールなので、サイト名を書くのは間違いってことになりますね。そもそも国際的に著作権を保護する、っていう趣旨なので日本語じゃなくてローマ字で書くのが正解と言えましょう。
発行年は「最初の発行の年」なので、プログラミングで常に現在の年が表示されるようにしてあるのは間違いってことになりますね。
「All Rights Reserved.」は要件にすら入ってないので不要です。コレも慣習以上の意味は特にない。
まあそもそも不要なのでなんでもいいといえばいいのだ
上にあげたルールの根拠ってなんなの? っていうと万国著作権条約という条約なんだけど、これもベルヌ条約で上書きされることになってるので、要するにコピーライト表記のルールって、いちおう存在はするけど実効性はないって状態らしいです。
一方でウェブサイトに何を書くかってなると、それはもう表現の自由の範疇であります。コピーライト表記、著作権表示がやたら色んなパターンがあってきっちり決まってないように思えるのは、そういう事情だったんですね。
画像盗用・転用を禁止する文言の書き方
フッターの著作権表示と合わせて、イラスト画像の盗用・転用をしないで!っていう文言を入れることもあります。
ほんとうは、著作権というもの自体が「他人が勝手に使用することを制限する権利」なんだから、わざわざ書く必要もないんだけどね。
だから決まりも何もないけれど、まぁ例えばこんな感じでどうでしょう。
当サイトのイラストや文章の無断転用・転載を禁じます。
Never reproduce or republicate without written parmission.
ただし、そんな文言を書いておいたところで、やる人は無視してやる。
ほんとうにイラストの無断転用を防ぎたいなら、画像を加工して「透かし」を入れるしかないです。詳しいことは別記事に書いたのでどうぞ。
イラストポートフォリオサイトの画像無断転用を防ぐ方法 – いしつく!ブログ
著作権表示は「書かない」ほうが正しいかもしれない?
著作権表示を「書かなきゃ」って立場で考えていくと、本当は色々ややこしい。ウェブサイトの著作権表示って、そういや何の著作権?
- イラストの著作権?
- 画像の著作権?
- ウェブサイトの著作権?
ウェブサイトのフッターに入れるんだから、ウェブサイト全体の著作権表示、ってことになるんだろうけど、「ウェブサイト全体」って画像も文も含むよね?
イラスト画像の著作権は、間違いなくそのイラストレーターのものでしょう。ただ、著作権表示が必要だとすれば、画像のすぐそばに逐一入れるべきかもしれない。
イラストが写った写真ってなると、ややこしい。
例えば、「どこかの駅に出された広告に使われたイラストを制作しました」って事例で、その広告が出された風景を撮影した写真の著作権はフォトグラファーのもの、みたいなケースもありうるよね。
そうなると自分のサイトに掲載するのはOKだったとしても、イラストレーター側が © と書くのはいいのか? っていう話になりますね。
そうなると、フッターの著作権表示が誤解を生む可能性もある。ならば書いてないほうが「正しい」っていえるのかもしれない。判断は今これをお読みのあなたに委ねます。
逆に「再利用OK」な著作権表示(クリエイティブ・コモンズ)
最後におまけですが、著作権表示は © だけじゃなく、いろんな種類のがあるんですよ、って話。
© が「勝手に使わないで」という意思表示なのに対して、逆に「再利用してもいいですよ」という著作権表示もあります。
有名なのがクリエイティブ・コモンズ (ちぢめて CC)。例えば「作品のクレジットを表記するなら再利用してもいいよ」など、いくつかの種類の著作権表示が設定されています。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは | クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
© は表示不要だけど、CCは再利用を許す条件を明示しないと人に伝わらないんで、自分がOKと思うライセンスを自分で選んで表示する、って感じで使います。「書かなきゃいけない」タイプの権利表記もあるってことですね。
イラストレーターの業務用ポートフォリオサイトでCCをつけることはあまりなさそうだけど、フリー素材とかでわりと遭遇すると思います。
いしつく!の教科書
「ポートフォリオサイトで仕事依頼が来るって、ほんとにそんなこと可能なの?」
そんなイラストレーターに読んでほしい全5章のnoteマガジンです。専門用語はできるだけ使わずに書きました。
目次 & 概要
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まえがき 9割のイラストサイトは仕事の役に立っていない
そもそもウェブサイトを仕事に役立てること自体が無理なのでは?そう思っているかたに、私の体験をお話しします。まえがきを読む » -
第1章 イラストサイトに仕事の問い合わせが来ないのは、こんな勘違いをしているから
「作品ギャラリー」を作ろうとしたり、ウェブサイトなんか活用できないものと思い込んでいたり。よくある勘違いを挙げました。1章を読む » -
第2章 仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦
どう作り、どう利用していくべきか、という全体の作戦をお伝えします。いちばん大切なのは、信頼を得ること。バズや過剰なアクセス稼ぎは要りません。2章を読む » -
第3章 仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう
ドメインやサーバー、コンテンツの用意のしかたを解説します。プロフィール文の改善例や、イラスト画像の準備のポイントなど。3章を読む » -
第4章 仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例
実際に運営されているウェブサイトのレイアウトとページ構成を解説します。なぜそのようになっているのか、デザインには理由があります。4章を読む » -
第5章 作ったあとどうする?上手な活用とは
ウェブサイトは作って終わりではありません。SEOについて、ブログのやりかた、営業メールの送りかた、現実の営業に活かしていく方法など。5章を読む »