イラストレーターを名乗り始めたばかりで、ペンネームの付け方に悩んでいる方へ。
いしつく!では、こうアドバイスしています。
特別な理由がなければ本名を名乗りましょう。
クリエイターだからいくらでもキラキラネームしていいよね!ってのは、ちょっと違うんじゃないかなあと思います。なぜ本名が良いのか、そして、ペンネームにするならどうするのがいいか。最後に少しだけ、屋号の話にも触れました。
本名をおすすめする理由その1:信用を得やすい
どう名乗るか、とは、自分をどう表現するかの選択です。
ハンドルネームみたいな記号的なペンネームとか、日本人とは一見わからないような名前やニックネームっていうのは、「本来の自分を隠します」という表現です。あなた自身がそういうつもりでなくても、それはそういう意味なんです。
本名を名乗ることは、「逃げも隠れもしませんので、それなりの覚悟と責任で仕事を引き受けますよ」って表現です。
企業から依頼されたいと考えたとき、どちらが信頼を得やすそうかは、説明するまでもありませんね。
そういう意味では、本名は楽チンなんです。これから実績を積んでいきたい方ならなおのこと、仕事相手からの信頼が欲しいのではないですか。
ちなみに企業と取引すると、支払いや税金の処理のために本名を明かす必要があります。せっかく隠してみてもビジネス現場では隠したままでは通らないので、それは覚えておいてください。
本名をおすすめする理由その2:名前が残るから
イラストレーターさんの大半は出版業界との取引がありますが、書籍の仕事をすると必ず奥付に名前が載ります。本は半永久的に世の中に残ります。そこに刻む名前で一番誇らしいのは、本名なんじゃないか。
執筆の仕事をしたとき、余計にそう思いました。Amazonで著者名検索したらちゃんと出てくるんですもん。私が仕事をした証が世間にちゃんと残っているって、本当に嬉しいしありがたいことだと思います。
そこに刻むのが、私の親や親戚が見ても私とは認識できないようなペンネームだったとしたら?TwitterやInstagramのアカウント名だったとしたら?ほんまにそれでいいの?
私なら、それは残念だ、と思います。せっかくなら、現実世界の本物の私の名前を刻みたい。だから本名で仕事をしていてよかったと思っています。
残念だと思わない人はこの話は忘れてください。ともあれ個人的な考えです。
ニックネームや読みにくい名前は、コミュニケーションコストが余分にかかる
Twitterアカウントや短いニックネームを、まるでペンネームみたいに表記しているイラストレーターさんが目につきます。それは名前なのか、屋号なのか、単なるアカウント名なのか、本当にただのニックネームなのか、本人に聞いてみるまでわからない人だらけです。これは良くない傾向だと思っています。
あるイラストレーターさんから「自分は変わったペンネームなので、企業に電話をかけるとき名乗るのがちょっと恥ずかしい」なんて話を聞いたことがあります。自分でつけた名前ちゃうんかい(笑)。
恥ずかしいくらいなら笑い話で済むからいいけど、なんて読むのかわからなかったり、音読しにくかったり、一見名前とは認識できないような名前なんかでは、コミュニケーションコストが余分にかかってきます。何かと損だったり面倒や手違いが発生しやすいってことです。
本名をそのまま名乗るのには抵抗がある、という人には、本名をひらがなやカタカナ表記にするパターンもあります。姓か名前一方だけ、でもいいですね。これなら字面はペンネームぽく見えるけど、口頭で名乗るときは自分の名前と同じだから違和感ありません。
ペンネームならせめて「姓+名」の形を守って
もし本名とはかけ離れた創作的な名前をつける場合でも、できれば、姓+名という日本人の名前に沿った形は守るよう、いしつく!ではアドバイスしています。
なぜか?
きちんと名乗ることは信頼を得るための基礎中の基礎だからです。信頼を得ることは、仕事を得るためにもっとも大切なことです。
例えば、商談会や交流会で、ニックネームしか書いていない名刺を出してくるイラストレーターさんがいます。果たしてそれで目の前のビジネス相手の信頼を得られるか?という話。その場ではにこやかに対応してもらえるだろうけど。
名前とは認識できないような記号やあだ名と、目で見て耳で聞いて「これは間違いなく名前だな」と思えるような名前、どちらが信頼を得やすいか?やはり言うまでもないですね。
個人的には、ビジネスの場でニックネームを名乗るなんてかなりの鋼のメンタルだな〜って思います。
ペンネームは、本名の代わりとして生きていく名前です。そう思ってつけてください。
変わったペンネームは、慎重に考えて
イラストレーターさんが変わったペンネームをつけるのを、一概に悪いとは思いません。「人それぞれでしょ!」と言いたい人もいるでしょう。
ですが、実際に世間でビジネスをしていく上では、名乗り方ひとつで良くも悪くも見られるものです。基本的な考え方くらいは知った上で決めてほしいので、この記事を書きました。
仕事とプライベートを分ける意味でとか、あるいは芸能人の芸名みたく、そういう名前の商品であるという意味を込めてペンネームをつけたい人もいるでしょう。自らのアーティスト世界を作り上げることの一環として、記号的で変わった名前が必要な人だっているでしょう。それらを否定はしません。
ただ、そういった意味を特に持たず、お気に入りの作家をなんとなく真似しよ!とか、本名とか恥ずかしいんで適当にハンドルネーム名乗りました!仲間のクリエイターもそうしてたんで!みたいな短絡的な決め方はしないでほしいと、老婆心ながら思います。
それはわざわざ自分を低く見せる行為だし、それに、後から名前を変えるのは、なかなかに難しいことなので。イラストレーターとして末長くやっていくつもりなら、慎重に考えてくださいね。
屋号の決め方
最後に、屋号の決め方について。屋号+本名が一番信用を得やすい表現ではありますが、そもそも屋号をつけるのかは人それぞれのお好みです。ただし、屋号がついていると少し立派に見える可能性があるので、お得です。
屋号は自分を大きく見せてくれる、と思ったエピソードがあります。
私はイラストレーターとしてはわりといろんなタッチのバリエーションがあるのですが、それらを全てウェブサイトに載せておいたところ、ある出版社から制作依頼がきて「このタッチを描かれた方を指名したい」と言われたことがあります。
たったひとりなのに、何名かのイラストレーターを抱えた組織だと勘違いされていたようです。
屋号というのは会社の登記とは違って、自由に名乗れます。だからといってコロコロ変えるのはいただけないので、つけるならやっぱりしっかり考えてください。
屋号はベンチャー企業みたいにオリジナリティのある名前も良いですが、「◯◯◯事務所」「◯◯◯工房」みたいな、フツーで昭和っぽい屋号が結局何かと信頼されやすいかもしれません。
「◯◯◯イラスト制作所」っていう屋号がステキなのは、良さげな検索キーワードが入っているところです。「イラスト」とか「制作」とか入っていると、ウェブサイトを作るとき多少お得です。こだわるほどではないけど、候補のひとつに入れておくといいかもしれません。
まとめ
この記事ではイラストレーターさんのペンネームと屋号の決め方について、こんなことをお伝えしました。
- 本名がベスト。理由は2つ、信頼を得やすく、世間に長く残る名前だから。
- ペンネームにするなら、本名のカタカナorひらがな表記がおすすめ。
- 創作的ペンネームの場合でも、日本人の名前の形式(姓+名)を守る。
- SNSのアカウント名や、音読しにくかったり一見して名前とわからないようなペンネームは、信頼性が低くコミュニケーションコストも余分にかかるので慎重になってほしい。
- 屋号はお好みだが、つけたほうがお得なことも。「◯◯◯事務所」などふつうの名前がいい。検索キーワードも意識できるとなお良し。
名刺やポートフォリオサイトには本名や所在地をきちんと載せよう。本名はともかく、住所の公開はちょっと抵抗がある、という人はバーチャルオフィスというものを使えばいいよ。
いしつく!の教科書
「仕事の依頼が来るポートフォリオサイトって、どうやって作ったらいいの?」
そんなイラストレーターに読んでほしい全5章のnoteマガジンです。専門用語はできるだけ使わずに書きました。
目次 & 概要
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まえがき 9割のイラストサイトは仕事の役に立っていない
そもそもウェブサイトを仕事に役立てること自体が無理なのでは?そう思っているかたに、私の体験をお話しします。まえがきを読む » -
第1章 イラストサイトに仕事の問い合わせが来ないのは、こんな勘違いをしているから
「作品ギャラリー」を作ろうとしたり、ウェブサイトなんか活用できないものと思い込んでいたり。よくある勘違いを挙げました。1章を読む » -
第2章 仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦
どう作り、どう利用していくべきか、という全体の作戦をお伝えします。いちばん大切なのは、信頼を得ること。バズや過剰なアクセス稼ぎは要りません。2章を読む » -
第3章 仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう
ドメインやサーバー、コンテンツの用意のしかたを解説します。プロフィール文の改善例や、イラスト画像の準備のポイントなど。3章を読む » -
第4章 仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例
実際に運営されているウェブサイトのレイアウトとページ構成を解説します。なぜそのようになっているのか、デザインには理由があります。4章を読む » -
第5章 作ったあとどうする?上手な活用とは
ウェブサイトは作って終わりではありません。SEOについて、ブログのやりかた、営業メールの送りかた、現実の営業に活かしていく方法など。5章を読む »