イラストレーターとしてクリエイターEXPOに数回出展したことがあります。ついつい気合を入れて色々用意してしまうんですが、振り返ってみれば無駄なこともしてました。
ぶっちゃけ安くない出展料を払うのに加え、ブースの準備、宿泊や移動にもお金がかかるんです。あれもこれもと凝ってたら、いくらあっても足りない。せっかく仕事が取れても赤字……そんなんじゃ悲しすぎる。
出費、当然抑えたいですよね?そんで、できれば仕事をいっぱい取って、出展料の元を取って帰ってきたいですよね?そこで、クリエイターEXPOではどうするのがお得で、どうするのが損なのか、という観点でイラストレーターさんへのアドバイスをまとめてみました。
最後に出展したのが2015年なので事情が変わっている場面もありそうですが、商談についてなどは基本的なことなので、いつでも役に立つはずです。
クリエイターEXPOのコスパを良くするのは自分次第!
搬入のこと
荷物の持ち込みには、宅配便がお得!
特に地方から参加する方へ。荷物を軽くして体力の温存を。格安航空会社を使うかたは手荷物料金も気になりますよね。そこで、ブースで使う予定のものは前々日くらいに段ボールにまとめて、宅配便で送ってしまいましょう。申込後にもらえる小間番号入りの住所を書くと、ちゃんとブースまで届けてくれます。
帰りの会場発宅配便はお得だけど…
帰りの荷物は、会場内から宅配便の申込ができてとても便利。ただし、個人向けの細やかなサービスとはちょっと違うので、安い代わりにある程度の日数がかかります。帰ってすぐ使いたいモノがある場合は、手持ちで帰るか、コンビニや郵便局から発送しましょう。
商談ツールのこと
変に凝ったパンフレットは損
逆の立場で訪れた時、やたらとオシャレでカワイイパンフレットをもらいましたが、そのイラストレーターさんに仕事を頼むのは避けました。肝心の情報が何も載ってなかったから。お金がかかって部数も多くは作れないのでしょう、会期途中で渡すものがなくなってしまう人もよく見かけます。つまりどちらも、チャンスを逃したってこと。訪問者のカバンは多くの資料を渡されてずっしり。A4のチラシで必要十分なのです。
チラシの作りすぎ問題!
かといって多く作りすぎるのも問題です。ある年、2000部刷ってしまいました。オフセット印刷ってこの部数だとあまり値段が変わらないので、ついつい調子に乗り……そうしたら半分以上余って帰りに余分な送料がかかりました。アホやなー…。必死こいて配っても1000部でちょっと余るくらいです、ご参考まで。
名刺は2種類作るとお得
冷やかし客がある程度いますので、電話番号を書かない名刺を用意しておくと安心です。商談会専用のメールアドレスを持っておくといいですね。
商談テーブルのこと
テーブルの上は「すっきり」が鉄則!
お客様には商談テーブルの前に掛けてもらい、テーブルの上でゆっくりポートフォリオをめくってもらえるようにしましょう。後述しますが、座ってもらうことが重要です。
無駄な出費、堂々の第一位は「貴名受」
わざわざ買ったけど、お手洗いに行く間の2-3枚の名刺を受けただけしか仕事をしませんでした。それくらいならテーブルにじかに置いていただけば……。そもそも出展者はほとんどの時間ブースにいるんだから。しかもこいつ、すごいかさばるんですよね。どうしても用意したい方もぜひ何か小さな箱で代用を。
電源、モバイルルータも無駄でした
いちど、商談テーブルにMacを置いて、スライドショーでイラストを流すということをやってみました。動きがあると目にとまるかな?と思ったんですが、意味なかったです!そのとき電源オプションを注文したのが無駄な出費でした。さらにネット環境を気にしてモバイルルータを用意していったのですが、携帯電話会社のWi-Fiが意外と好調だったため、これも無駄でした。
背面パネル展示のこと
「ギャラリー」化をやめて、キャッチコピーを表示せよ
どう仕事を取り、出展料のモトを取るか?そのために重要なポイントが展示です。カンバスやイラストボードをゴテゴテ貼り付けて「プチギャラリー」化するのはやめましょう。かわりに、キーワードやキャッチフレーズをポスターのように巨大な文字で表示する。例えば「医学系イラストならお任せ!」とか、「ファッション誌実績多数!」とか。本当の意味でイラストレーターを探しに来た人に見つけてもらえるので、冷やかし客を避け、商談をもたらします。
ポスター印刷は無駄。普通紙でいいよ。
背面パネルにぴったりのサイズでポスターをということで、立派なB1のコート紙で印刷所へ発注したことがあるんですが、おすすめしません。だって値段が高いわりに両面テープを使わざるを得ないから一回こっきりだし、しかもコート紙は照明でテカって読みにくい!なので、次の時はA3用紙で分割プリントしてタイルのように貼りました。普通紙で。このほうがずっと良かったです。遠くからでも見やすく、運びやすく、お値段も数分の1に。
必携アイテム:はがせる両面テープ
ブースは原状回復して返還のこと、なので跡が残るような貼り方はできません。そこで使うべきはその名もズバリ「ニトムズ はがせる両面テープ」!絶対買っておきましょう。もしも忘れたり足りなくなった場合は東京ビッグサイト内にある「ビジネスセンター」をチェック。商談に使う文房具を揃えてあるのでもしかしたらあるかも。
商談のこと
服装は、ビジネスカジュアルで
商談をもたらしてくれるお客様は、男性はワイシャツスラックス(4月だったらスーツだろね)、女性はビジネスカジュアルで来られます。対等に話をしたいのならば、まずは服装から対等に。社会人として当たり前すぎる事項なのですが、何を勘違いしてかコスプレや超個性的な服装で来るイラストレーターさんが一定数いるので、そのような中、服装をきちんとしておくだけでも、イヤな言い方ですが「勝て」ます。
質問シートを作っておくと便利
たくさん商談をするとお一人ずつ内容を覚えていられないのでメモは必須なのですが、こちらから聞きたいことをあらかじめアンケート用紙みたいにまとめておいてコピーしたものがあると便利です。目の前で名刺に書き込むのもなんか失礼だしね!
お客様にたくさん座ってもらった者が得をする
人間の心理で「ラーメン屋の行列を見るとついつい気になり……」という現象があるでしょ。それに似たことが起こるんです。お客様と話がはじまったらすぐに「どうぞ、お掛けください」と椅子をすすめましょう。そしてゆっくりポートフォリオをめくってもらいましょう。そしたら何回かに一度は必ず、別のお客様がその様子を後ろから眺めながら待っているはずです。こうやって商談の連鎖を作った者の勝ちです。そのためにテーブルに物をごちゃごちゃ置かない。
事前アポを取って、来てもらおう
その連鎖を作りやすくするため、誰かに来てくれるよう約束を取り付けておきましょう。例えば仲のいい担当者さんとか、まだネットで繋がっているだけの方とか。実際、出展者向けパンフレットにも事前の声掛けをするよう書いてあるはずです。
手の届く位置にチラシを置いておこう
商談の最中に他のお客様が気に留めてくださることがままあるので、チラシは手の届く位置に置いておきましょう。興味を引く内容であれば、時間を見計らってもう一度訪ねてきてくださる方もいます。そこでイラストだけでなくきちんと情報も載せておくと効いてくるわけです。
心がまえ
クリエイター同士の交流はするな
アートイベントじゃないんです。商談会なんです。お隣さんは競合他社なんです。企業ブースを見てごらんなさい。もっと真剣ですよ?ヒマだからって隣とおしゃべりとか、それは出展料を自ら無駄にする行為。さらっと大人びた感じでご挨拶と名刺交換にとどめておいて。情報交換したい人は会期後に飲み会でも開いてみたら、みんなに喜ばれるんじゃないかな?
いつもスマイルがお得!
緊張からか仏頂面になってしまう人、会場で時々見かけました。商談会はお客様と話して、仕事を取ってナンボ。せっかく安くない出展料を払ったのに、自ら話しかけづらい雰囲気を出していてはいったい何をしているのだか。モトを取るためにも、ここはひとつ、スマイルスマイル!
セキュリティ
冷やかし客に注意しよう
会場には一般の人も来ます。眺めているだけならいいのですけれど、「クリエイターとお話ししてみたい」などの動機で勝手に座ってくる変わった人もたまにいます。こういう方とはいくら話しても商談にはなりえないので、目を合わせないなどのちょっとした心の強さが必要です。運営にも規制してほしいところですけどね。
足元を見てくる客に注意しよう
その他に気をつけるべきは「クリエイターとはできる限り安くこき使うもの」と考えているお客様です。一見まともな商談相手のようだから注意が必要です。少し話してみると「仕事を『くれてやる』」みたいなスタンスが透けて見えてくるのですぐわかります。異常に安い値段を提示してきて「今度もっといい仕事回すからさ」とかね(そういう人から次の仕事が来ることはありません)。丁重にお断りするか「検討しておきます」とか言って回避しましょう。
盗難には十分注意を!
当たり前のことですが、決して貴重品を置いたまま席を離れませんよう。お財布、電話は言わずもがな、ディスプレイやラップトップ、タブレット端末なども。前述の「商談テーブルにMacを置いてスライドを流す」の時は、盗難防止ツールを買いました。思えばこれも余分な出費だったな。商談テーブルの上には印刷されたポートフォリオのみ、やっぱりこれが安心だ。
お食事、宿泊
ランチ……会場内のコンビニ&カフェはあてにしない
ビッグサイト内にコンビニやコーヒーショップはありますが、お昼時は想像を絶する混みっぷりです。商談機会を逃さずモトを取るつもりなら、席で軽食を取ることにしたほうがいいでしょう。会場のコンビニは朝でも混むので、出がけに自宅やホテルの近くで買っておくのがベストです。
ディナー……ホテルのビュッフェが意外とお得
閉場後、お客様やご友人と会食したい方へ。会場周辺の飲食店はどこも満席です。そんな中比較的空いてたのは、ワシントンホテルのビュッフェ。値段が高いイメージだからかな?意外とリーズナブルでうまかったですよ(デザートもあるし!)。それ以外はできればどこかに予約を。しそびれた場合はいっそのこと豊洲か新橋あたりへ出たほうが早いかもしれません。
宿泊は近くのホテルが一番。
地方から来られる方へ。少々値段が高いと思っても、会場ごく近のワシントンホテルかサンルート有明を取るのがいいですよ。朝の会場へ移動の電車もなかなか混むし、会場でもたくさんの人と話すと想像以上に疲れます。心身のコンディションを整えておくため、すぐ行けてすぐ帰れる場所にホテルを取ったのは正しい出費だったと思います。ただし予約はお早めに!
会期後のこと
BCCじゃなくて、名前入りのメールがお得
会期後、名刺交換をした相手にメールを送るくらいのことはみんな思いつくと思うけど、イラストレーターさんはほとんどの人が「BCCで失礼します」なので、差をつけたいなら名前入りのメールを。格段に感じが良くなり、仕事に繋がる確率もUP。でも方法は?……気になるかたはいしつく!にお申し込みを!
ウェブサイトをちゃんと作っておこう
会期中に直接商談に至ることって、実はそんなに多くない。数ヶ月後(下手すりゃ数年後)にお仕事のオファーをくださる方が結構いらっしゃいます。そのときに改めて検討してもらうため、情報がきちんと整っていてお問い合わせフォームのついたウェブサイトは必須なのです。
まとめ!お金をかけていいところ、削ってもいいところ
以上、まとめてみるとこうなります。
お金をかける必要はないと思ったもの
- パンフレット(凝りすぎ、作りすぎ)
- 貴名受、ディスプレイなどテーブルの上に置くもの
- 電源オプション
- 背面ディスプレイ
- ランチ代
お金をかけたほうがいいと思ったもの
- 荷物を送る送料
- 事前告知チラシサービス
- ホテル
- 服
- 名刺
- ウェブサイト
さいごに、ちょいと耳の痛い話ですが。
私より後に出展したイラストレーターさんの話によると、クリエイターEXPOも回を重ねて規模が大きくなりチャンスも増える一方で、変なお客様も増えてきた気がする、と。そんな中、ちゃんとしたお客様に振り向いてもらうには、こっちも相応の準備が必要なんですよね。
素人感覚でお祭とかアートイベントのつもりで参加してると「クリエイター安く使ったろう」系のお客様の目にとまっちゃうんです。だから、ビジネスマンとして会場入りするほうが間違いなくお得です。
絵を描くことしか考えてない人には違和感あるかもしれないけど、クリエイターEXPOをきっかけにビジネスについて考えてみてほしい。その後のイラストレーター人生もかならず良くなるから。
いろいろ書きましたが、実り多い商談会にしてね!
いしつく!の教科書
「ポートフォリオサイト、自作してみたけど、仕事依頼なんて一回も来たことない」
そんなイラストレーターに読んでほしい全5章のnoteマガジンです。専門用語はできるだけ使わずに書きました。
目次 & 概要
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まえがき 9割のイラストサイトは仕事の役に立っていない
そもそもウェブサイトを仕事に役立てること自体が無理なのでは?そう思っているかたに、私の体験をお話しします。まえがきを読む » -
第1章 イラストサイトに仕事の問い合わせが来ないのは、こんな勘違いをしているから
「作品ギャラリー」を作ろうとしたり、ウェブサイトなんか活用できないものと思い込んでいたり。よくある勘違いを挙げました。1章を読む » -
第2章 仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦
どう作り、どう利用していくべきか、という全体の作戦をお伝えします。いちばん大切なのは、信頼を得ること。バズや過剰なアクセス稼ぎは要りません。2章を読む » -
第3章 仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう
ドメインやサーバー、コンテンツの用意のしかたを解説します。プロフィール文の改善例や、イラスト画像の準備のポイントなど。3章を読む » -
第4章 仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例
実際に運営されているウェブサイトのレイアウトとページ構成を解説します。なぜそのようになっているのか、デザインには理由があります。4章を読む » -
第5章 作ったあとどうする?上手な活用とは
ウェブサイトは作って終わりではありません。SEOについて、ブログのやりかた、営業メールの送りかた、現実の営業に活かしていく方法など。5章を読む »