イラストレーターのポートフォリオ(作品集)の作りかたでよく聞かれることをまとめてみました。
ここでは主に、フリーランスのイラストレーターが仕事依頼獲得のために作るイラストポートフォリオについて書きます。学生や就活のためにポートフォリオを作る人も基本はだいたい同じですけど、適宜読み替えてくださいね。
- イラストポートフォリオの作り方、基本的な考え方
- ポートフォリオのレイアウトはどうすればいい?
- ポートフォリオを作るソフト/アプリは何がいいですか?
- ポートフォリオの印刷はどうすればいいですか?
- ポートフォリオのサイズや体裁はどうするのがいいでしょうか?
- イラスト作品以外に何を載せたらいいのでしょうか?
- イラストの説明文はどのように書けばいいのでしょうか?
- 依頼されたイラストをポートフォリオに載せていいのでしょうか? (著作権的な意味で)
- ポートフォリオに、趣味で描いたイラストを入れてもいいのでしょうか?
- 下手なイラストをポートフォリオに入れてもいいのでしょうか?
- ポートフォリオの自己紹介文はどのようにかけばいいのでしょうか?
- ポートフォリオにはプロフィールを入れなくていいんですよね?
- 参考のために、イラストレーターのポートフォリオ作品集を見られるサイトはありませんか?
- デザイナーとしても活動している場合、ポートフォリオにイラストをどのくらい入れればいい?
イラストポートフォリオの作り方、基本的な考え方
まずはポートフォリオの作り方について、ポイントをまとめます。
- ポートフォリオは「事業案内」であり「製品カタログ」と思え
- 「画集」や「アートブック」と勘違いすんな
- イラストだけ載せるのではない。情報が必要
- サイズ・体裁はA4ファイル、またはそれに準じたサイズで
ポートフォリオは日本語でいうと「作品集」なんだけど、だからってほんとうに「作品を眺めて楽しむための小冊子」を作らないでね。
ポートフォリオって仕事の依頼 (や就職) を勝ち取りたいから作るものであるはず。
それには、ポートフォリオを渡した相手が「このイラストレーターは仕事人としてまともな奴なのか」を検討できるようでなければならない。ならば、それに対応できるような情報を載せた資料を作る必要がある。
作品集を作るな、アートブックを作るな、っていうのはそういうことです。詳しくは別記事にて。
ポートフォリオのレイアウトはどうすればいい?
A: 1ページに1プロジェクト+情報、がわかりやすい
イラストレーターは、一回の依頼で複数のイラストを制作して納品することが多い。その一回の依頼をここではプロジェクトって言ってみたけど、その単位でまとめるのがいいと思います。
ポートフォリオにはイラストだけ載せるのではないので、説明文や付随情報をそのプロジェクトの制作例と合わせて読めるようにしておくとわかりやすい。
ポートフォリオを作るソフト/アプリは何がいいですか?
A: インデザ (InDesign) が便利
イラレでもいいけどページ数が増えると扱いづらいから、この際だからインデザ覚えたらどうかな? 私もインデザはなぁ…とハードル高く感じてたけど、やってみたら便利よ。
ってその前に、プロのイラストレーター名乗るのにAdobe製品入れてない人。あかんよそれ。安く買える手段もあるからAdobe CC入れといてね。
ポートフォリオの印刷はどうすればいいですか?
A: キンコーズか印刷会社に発注がおすすめ
ファイル収納タイプならキンコーズのセルフプリントが安い。前述のインデザのデータから直接印刷できるからキレイなのよ。
もしくは印刷会社に発注。こちらは品質は安心だけどまとまった数じゃないと割高なので考えて使う必要がある。
コンビニプリントはすごい便利だけど、画質が心配すぎるので急な時の手段と思っておく方がいいかも? あと家庭用プリンターは意外と思い通りの色で作れるけどコストは高めです。
詳しくはこちらの記事で。
ポートフォリオのサイズや体裁はどうするのがいいでしょうか?
A: サイズはA4タテ左綴じ。体裁はクリアブック収納 or 中綴じ印刷
サイズはA4で。ポートフォリオはタテ位置/左綴じが伝統です。プレゼン資料なんかはヨコ位置が多いけど逆よね。
体裁は、1ページずつ印刷してクリアブック (プラスチックファイル) に収納する。または、中綴じ製本にするイラストレーターも最近多い、というのも案外安いんです。
ポートフォリオをA4にすべき理由。それは、ポートフォリオは制作会社や出版社にお勤めの人の手に渡り、社内で保管されるから。目立ちたいのかアート意識高いのか変な体裁にするイラストレーターいるけど、ジャマになりがちなので率先して捨てられることうけあい。
イラスト作品以外に何を載せたらいいのでしょうか?
A: プロフィール、タッチ別用途の説明、サンプル日程(納品までの流れ)、発注方法の説明……あとは自分で考えて!
ようは「お客様が仕事を発注する際にどういう情報を必要とするか」「何を伝えておけばお客様の助けになるか」を考えれば、イラストレーターそれぞれに出てくると思います。
イラストの説明文はどのように書けばいいのでしょうか?
A: そのイラストが依頼されたときやりとりしたことを書けばいい
お客様のとのやりとりを振り返ればいくらでも情報が出てきます。
まず依頼時。どういう媒体のどういう企画で、なぜイラストが必要だったのか。どういう要望があったのか。続いて、制作時。どんな工夫が必要で、どう対応したのか。最後に、それが出版/リリースされてどんな効果や反響があったのか。
ポートフォリオをみる人は、イラストを眺めて楽しみたいんじゃないんです。実際に依頼したらどうなるか? が知りたいんです。だから実際に依頼したらどうなるか? を書けばいいんです。
就活の場合は「こいつを雇ったらどう活躍してくれるか?」ですね。
イラストの説明文っていっても「その絵に込めた想い」のポエムなんか書いても意味ないよ。
依頼されたイラストをポートフォリオに載せていいのでしょうか? (著作権的な意味で)
A: 受注時に確認を取っておくのがベスト
著作権を全放棄するような契約をしていないかぎりポートフォリオに載せたくらいで問題になることはないですけど、依頼されたときに「ポートフォリオに載せるけどいいですか」と確認しておくのがいいです。
取引先によって「リリース後なら大丈夫」とか「会社名を出さなければOK」とか色々要望があると思うので、そこは守ってあげましょう。
というか、「自分のポートフォリオに載せるのすら一切ダメ」な契約とか「自分が作ったと公言するのもダメ」と求めてくるような取引先って相当ヤバいと思うので、私だったら関わらないです。
ポートフォリオに、趣味で描いたイラストを入れてもいいのでしょうか?
A: 商品(サンプル)になると思うならば入れたらいいよ
そのタッチでその題材のイラストが「これはこういう媒体のこういう種類の企画ならば依頼が来るかもな」って思えるなら、載せたらいいです。
自主制作のイラストでも、説明文は書けるはず。「もし、これを依頼されて制作したとしたら、こんな手順でこんな納期がかかります」って説明すればいい。
下手なイラストをポートフォリオに入れてもいいのでしょうか?
A: 商品(サンプル)になると思うなら以下略
「私はイラストが下手だけどイラストレーターです」ってのがどういうシチュエーションなのか私にはよくわからないんだけど、それでも仕事の依頼が来るなら立派なプロだと思うよ。需要があり、必要なサービスを提供できている、ってことだから。
そのヘタなイラストもビジネスには意味があると思うなら、載せたらいいと思います。
オタク系の人は業界独自の基準を満たしていただくのがいいと思うけど、一般的なジャンルのイラストレーターには何がうまいで何がヘタかなんていえないので、「その絵が商売になるかどうか」で決めるしかないです。
この話、詳しくは別記事でもうちょっと掘り下げてみます。
ポートフォリオの自己紹介文はどのようにかけばいいのでしょうか?
A: 経歴にフォーカスして書く。就活の時を思い出して。趣味語りは不必要
イラストレーターのプロフィール文といえば、「数年前からアートイベント等で活動」みたいなざっくりしたことしか書かない人がすごく多いです。なのでみんな似たような内容で人柄とかよくわからん感じになりがち。
あと趣味の話ばかりやたら熱く語るのも無意味ですね。依頼主はあなたの人間性、つまり「ちゃんとした人なのか」が知りたいので、趣味の話はおまけとして一言のみにすること。
伝わるプロフィール文にするには、経歴 = 学歴 + 職歴 を軸に書くことです。事実を列記するほうがかえって人柄が伝わります。詳しくはこちら。
【3】仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう|いしつく! / イラストサイトのつくりかた|note
ポートフォリオにはプロフィールを入れなくていいんですよね?
A: んなわけないやろ
ヤッホー靴袋に「ポートフォリオは作品を眺めてもらうためのものなので、プロフィール文とか文章は一切いらない」みたいな回答があり、信じちゃっている人がいるらしいですけど、これ大嘘ですからね。
ポートフォリオにはプロフィール文も説明文も当たり前に必要です。ここまで読んでくれた人には説明不要ですね。
参考のために、イラストレーターのポートフォリオ作品集を見られるサイトはありませんか?
A: ポートフォリオは「飯の種」。おいそれと同業者に参考にさせたいイラストレーターなんかいません
ぶっちゃけ、ポートフォリオを他の同業者に「マネしてもいいですよ〜」なんて、どんどん見せたいイラストレーターなんかいないと思ってください。あなたが駆け出しであったとしても、競合他社であることには変わりないですから。
だって、それぞれに工夫を凝らして考えて作るんですもの。仕事の依頼が来るように、細部まで考えて、結構な時間をかけて。説明文を書くのも意外と苦労するもんです。
イラスト制作という仕事を真剣にやっているイラストレーターほどそうです。
逆にいえば、「いいよ〜」とどんどん見せてくれちゃうようなポートフォリオは、あまり思い入れがないか、アート意識に基づいて作られていて (ようは「作品」だと思っているのでむしろ見せたい) 仕事を増やす意味ではあんまり参考にならないかのどちらかです。
デザイナーとしても活動している場合、ポートフォリオにイラストをどのくらい入れればいい?
A: 1割まで。イラストとデザインのポートフォリオは別々に作ること
デザインの仕事っていっても色々あるので一概には言えませんけど、と前置きさせてもらいますが、基本的にはイラストレーターとデザイナーの仕事は別ものです。
デザイン成果物のポートフォリオに「イラストもできますよ」ってイラストの紹介も入れる場合、20ページ中の2ページくらいまでが限界ではないかな。
逆 (イラストレーターとしてのポートフォリオに「デザインもできますよ」の場合) も然り。
まぜこぜにしちゃうとどっちも中途半端になるんで、イラストとデザイン、それぞれ別のポートフォリオを作るのが結局いいと思いますよ。プロフィールとかは同じ内容でいい。
「ポートフォリオ」じゃなくて「ポートフォリオサイト (ウェブサイト)」の作り方が知りたい方。いしつく! ではポートフォリオサイトの作り方の解説も色々書いているのでよかったら他の記事も読んでみてください。
いしつく!の教科書
「ポートフォリオサイトで仕事依頼が来るって、ほんとにそんなこと可能なの?」
そんなイラストレーターに読んでほしい全5章のnoteマガジンです。専門用語はできるだけ使わずに書きました。
目次 & 概要
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まえがき 9割のイラストサイトは仕事の役に立っていない
そもそもウェブサイトを仕事に役立てること自体が無理なのでは?そう思っているかたに、私の体験をお話しします。まえがきを読む » -
第1章 イラストサイトに仕事の問い合わせが来ないのは、こんな勘違いをしているから
「作品ギャラリー」を作ろうとしたり、ウェブサイトなんか活用できないものと思い込んでいたり。よくある勘違いを挙げました。1章を読む » -
第2章 仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦
どう作り、どう利用していくべきか、という全体の作戦をお伝えします。いちばん大切なのは、信頼を得ること。バズや過剰なアクセス稼ぎは要りません。2章を読む » -
第3章 仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう
ドメインやサーバー、コンテンツの用意のしかたを解説します。プロフィール文の改善例や、イラスト画像の準備のポイントなど。3章を読む » -
第4章 仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例
実際に運営されているウェブサイトのレイアウトとページ構成を解説します。なぜそのようになっているのか、デザインには理由があります。4章を読む » -
第5章 作ったあとどうする?上手な活用とは
ウェブサイトは作って終わりではありません。SEOについて、ブログのやりかた、営業メールの送りかた、現実の営業に活かしていく方法など。5章を読む »