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イラストの仕事を始めたばかり、もしくはこれから始めようとしているイラストレーターさんやフリーランスのクリエイターさんへ。請求書の書き方がわからない!って人のために、実際にイラストレーターとして企業と取引してきた私が教えます。
公開 2018年4月5日
改定 2021年1月21日
請求書の書き方は、個人だろうがフリーランスだろうが関係ない
請求書ってなに?なんて人は社会人でさすがにいないとは思うけど、念のため。仕事を受注して納品して、そのあと代金を受け取るために「この度の仕事は○○円かかりましたから払ってください」とお客様に伝える文書。これが請求書です。
請求書ってじつは、法律で「このように書け」って定められているわけじゃないんです。あくまで、あなたと取引先のあいだで連絡をする文書なので、書式は自由です。
ただ、「こういう項目はきっちり伝えるようにしよう」というのは、誰が決めたわけじゃないが、ふわっと決まってはいます。商習慣ってやつっすね。
できることなら、取引先さんがあなたを信頼して、安心してお金を払ってくれるほうがいいでしょ?「こいつ大丈夫なん」とか思われるようじゃ、次の取引もないでしょ。
なので、押さえるべきポイントは押さえた請求書を作ろう。
個人事業主・フリーランスであろうと、会社員であろうと、請求書の書き方はだいたい同じです。個人だから・クリエイターだから簡略でテキトウでいい、みたいなことは無い。
会社員経験がある人は、会社が取引先に向けて発行してた請求書を参考にすればかんたんだね。
請求書の作成ツールは?
- Windowsの人はMS Excel
- Macの人はNumbers
- どっちもなければGoogleスプレッドシート
請求書は書式自由、つまり極論手書きでもOK。私の親世代は手書きで書いてたしな。まあでも計算ミスや記述ミスが起こりがちなんで今時誰もやらないですね。だいたい表計算ソフトを使います。
コンピュータがWindowsの人はMicrosoft Officeがバンドル(パソコンについてる)されてることが多いと思うので、Excelでよろしいでしょう。
MSオフィスついてない!買うと高い!って人はオフィス互換なサードパーティ製ソフト(キングソフトとか)でもいいよ。会社員だと共有性の問題でやっぱMSじゃないと〜ってことが多いんだけど、まったく個人で仕事してるんならそういう問題もないので。
無料のがいいならGoogleスプレッドシートでもOKです。Googleドライブから「新規 > Googleスプレッドシート」で作れます。iOS等のアプリもあるよ。
Apple党の人はMacについてるNumbersでよろしいかと思います。私もNumbers派です。
請求書に書くべき項目は?
自分の情報
- 屋号
- 名前
- 住所
- 電話番号
- メールアドレス
当然のことながら、どこの誰が請求しているかわからないと困るので、まずはこれらの情報を書きます。
フリーランスイラストレーターで、電話はおろか住所も名前も公開したくない!って人へ。取引先の立場で考えてみてほしいんだけど、どこの誰だかわかりゃしないいち個人に気持ちよくお金を払えますかね?
というわけで請求書に連絡先を一切書かないことはあり得ない。ペンネームに関しては後述します。
イラストレーターの場合、一緒に仕事するのが編集プロダクションで、支払いは大元の出版社、みたいなパターンもたまにあるでしょう。こういう場合、住所も電話番号も書いてないと「このひとだれ?信用できない」ってすぐには払ってもらえないことだって無きにしも非ず。
実際に支払業務をする人は、あなたと一度も会うことのない経理担当者ってことが大半です。不備があったらすぐ連絡を取れるように、連絡先はテンプレに必ず入れておきましょう。
発行日、宛先、件名、金額
発行日
基本は、文書を作った日を書けばいいです。ただ、支払いのタイミングに関係があるので、心配な場合は先方に確認したほうがいい。「月末の日付を書いてほしいな」なんて言ってくる人もいる。
宛先=相手の社名(+担当者の名前)
会社名の場合は「○○株式会社 御中」
担当者さん宛の場合は「○○株式会社 (担当者名)様」
「様」と「御中」を同時につけない。
件名
その請求はどの仕事に対しての?というのがわかるように書く。イラストレーターの場合お手伝いした媒体名とか記事名とか。先方の事務処理の都合もあるので、確認したほうがいいかもね。
ひとつの取引先さんからいろんな仕事を引き受けていて、月末にまとめて請求しますよ〜なんて場合は「X月分制作作業」みたいな感じでも。
合計金額
消費税を含めた合計金額を書く。その下に表を設けて、内容の明細と金額の根拠が見えるようにすること。
支払先の情報
- 口座番号と名義
- 支払手数料
- 支払期限
口座番号と名義
ここに支払ってくださいね、という先を書いておく。ふつうは銀行口座。これを間違えると「振込先がないんですけど??」ってなって先方さんにご迷惑をおかけすることになるので、かならず確認かくにん。
支払手数料
「支払手数料はご負担ください」と入れておく。ただしあまりないけど「制作者が振込手数料を負担してください」っていってくる会社もある。ようはどっちが持つのか明確にしておくこと。
支払期限
いつ支払われるか、日にちを書く。この請求書がいつ払われるべきものか書いておくことで、お互い把握しやすい≒事務処理的に便利。請求出したはいいものの「いつ払えるかわかりません」じゃ困るんで、支払日がいつなのか先方にはかならず聞こう。
源泉徴収税のこと
フリーランス/個人事業主として企業と取引してると、源泉徴収ってものに出会います。
あらためて源泉徴収ってなんなん?といいますと、報酬から所得税としてかかるであろう金額(だいたい1割くらい)をあらかじめ差し引いた状態で支払うことです。
もし、請求書を出して、後日お金が振り込まれたとき、その金額が請求書に書いた金額と違ってたら、それはおそらく間違いってわけじゃなく、所得税を差し引かれた結果だと思います。
ちなみに、このとき差し引かれた所得税のうち、払いすぎた分を返してもらう手続きを「確定申告」っていいます。みんなが3月くらいに税務署でやるやつです。
請求書に源泉徴収税を書くように、と言われたら?
ところで、たまに「請求書に源泉徴収税を記載するように」って言ってくる取引先があります。そういうときはどうしたらいいか?まあ、ご要望なので書いてあげてください。
ただし、源泉徴収税の徴収は支払いをする側の義務です。だから本来はあなたが計算をするのはおかしいし、請求書に書く必要もない。あくまで「お客様のご要望だから特別に書いてあげますよ」という立ち位置でOKです。
請求書に源泉徴収税を書く場合は、請求額の税抜金額の10.21%(所得税+復興特別所得税)を源泉徴収税額として、その金額を全体の請求額から引いたのを「実際の支払額」として書く。
あくまで全体の請求額が変わるわけではなく、実際に支払う金額が請求額とは違う金額になるよ、ということがわかるように書くこと。
サラリーマンはこれを理解してないのでたまにモメる。覚えておいてね。
詳しくは国税庁のサイトにて。
令和2年版 源泉徴収のしかた|国税庁
請求書にハンコは必要
請求書にはハンコを押そう。
個人でイラストレーターをやっている人は個人の名前がついたのを使います。銀行印とか、あんな感じのね。会社を設立している人は会社印で。
Twitterとかでフリーランスクリエイターっていうと「脱ハンコ社会!!古い大手の風習うざい!!」みたいなこと言ってる人ばかり見かけるけど、鵜呑みにしないでね。特にイラストレーターは。
出版社や編集プロダクションと取引することの多いイラストレーターは、判子を忘れたが為に支払いに支障をきたすこともあるから、「印鑑必須」で習慣づけましょう。
個人が大手と取引してもハンコひとつあるだけで信用度が上がる。ハンコひとつ忘れるだけで信用が下がる。日本はまだまだハンコ社会です。順応して適切に使ってったほうがトクに決まってます。
請求書をペンネームで作ってもいいのか
理屈でいうと、請求書を送ったのがあなただということがわかればいいので、ペンネームで請求書を作ってもかまいません。
ただ、ペンネームは「証明の手段がありません」。本名&住所には戸籍があります。会社名には登記簿謄本があります。でも、ペンネームはただ単にあなたが自ら名乗る、それだけのものです。
ちなみに個人事業主の開業届に屋号としてペンネームを書くこともできるけど、確定申告のたびに毎年名乗り変えることだってできちゃいますので、証明書ほどの力はやっぱり持てないのです。
なので、ほとんどの取引先は、あなたの本名や住所を尋ねてくると思います。「どこの誰だかはっきりしてください」ってことですね。そりゃそうですよね。いち企業が、素性のわからない人にお金なんか払っちゃいけませんからね。
というわけなので、請求書には住所と本名、加えてペンネームを併記するのがいちばんいい=用を足せるのじゃないかなと思います。
あと、税務のためにマイナンバーと身分証明書の提出を求められることがあります。このときはペンネームじゃなく本名を伝えます。
請求書を送るタイミング
依頼をうける時に確認しておきましょう。代金はいつ支払ってもらえるか。企業と取引するとだいたい月末締め・翌月末払い、のようなことが多いです。
請求書のタイミングは、基本は仕事が終わってからです。納品後とか、携わった書籍の発行後だとか、各社だいたいこのタイミングで請求してもらうってタイミングが決まっているので、その頃になると「そろそろ請求書を発行してくださいね」って言われることが多いです。
私はイラストレーターとしてはちゃんとした企業とだけ取引してるんで、自分から「そろそろ請求していいですか」って尋ねなきゃいけないことってほとんどないな。
個人とか相手に仕事している人はあなた主導で「請求書を発行しますよ」とお知らせしてあげたらいいです。
いずれにしても、いきなり請求書を郵送するのではなく、メールでいくらかやりとりしてから最後に郵送するのがふつうです。
請求書を郵送するとき
企業との取引では、請求書はメールでデータを送るだけじゃなくて郵送してください、って言われることはまだまだ多いです。
封筒の宛名の書き方
封筒の書き方、わかります?最近それも知らない人たまにいるからびっくりするよ。切手は84円だよ(2021年1月現在)。
- 右から住所、会社名、部署名、お名前+様
- 担当者名まで書くとき、会社名に「御中」をつけるな
- 切手は左上
- 「請求書在中」のハンコ(必須ではない)
- 自分の住所(裏)
- 封はテープじゃなくてのりでとめる
- 封に〆と書く(必須ではない。ただの風習)……バツではないので注意
カバーレター、送り状はいらない。けど
カバーレターや送り状はいらないです。つけないと失礼にあたる!みたいなのは日本的謎ビジネスマナーなのでスルーで大丈夫。どうせ捨てられるだけなので、別に気にしなくていいよ。
前述のように請求書を送るまでにやりとりがあるはずでしょうから、いきなり送られてきてびっくり!みたいに思われることはまあまずないでしょう。
でもなんかそのままじゃそっけない、と思うならば大きめの付箋とかで「このたびはありがとうございました、またよろしくお願いします」とかメッセージを添えたらどうでしょう?いちプロジェクトご一緒した間柄なのだし、お礼は伝えたいもんね。
ちなみに封筒にメッセージを書くのもアリです。
宅急便や「ゆうメール」で送っちゃダメだよ!
請求書は、普通郵便で送ろう。
請求書は「信書」です。信書ってなに?っていうと郵便法って法律で定義されてて「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」のこと。
信書を送るのに使っていい郵便サービスってのが決まってて、それ以外を使うと法律違反って決まりがある。
請求書単体なら、料金が普通郵便がいちばん安いので間違えることないと思うけど、「ゆうパックでイラストの原本を送るのでついでに請求書も同梱しちゃお」はダメなのでご注意を。
請求書テンプレートの例
このたびご紹介したテンプレートの全体はこんな感じ。
私もイラストのお仕事ではだいたいこういう感じのテンプレートを使ってます。
テンプレートはネットで検索したり、あるいはソフトにあらかじめ入っているのをひとまず使えばいい。だけど実際には仕事内容や取引先さんのルールに合わせて改造していく必要は出てくる。なんやかんやでそのままではなくて、その都度修正しながら使う感じですね。
なので、結局は自分で作るのが便利で長持ちです。まあそんなに難しいもんでもないから、↑の画像見ながら、自分のツールで作ってみてください。
余談だけど、自分の描いたイラストをあしらった請求書なんてのも実はアリ。まあ仕事の中でいちばんそっけない書類のひとつなんで、ちょっと個性を出してデザインしてみてもいいかもね。
まとめ : 請求した代金をきちんと回収するために
請求書をきちんと作ることがあなたの信用を上げる。信用を上げれば、請求した代金をきちんと回収できる。クリエイターだから・個人だからわかんな〜いとか甘えを出さず、信用される事業主としてきちんとやってこう!請求書ひとつにもそういう気持ちが現れるもんだぁね。
この記事でお伝えしたかったことのポイントは次のとおり。
- 請求書は法律で「こう書け」って決まってるわけじゃない。
- だけど、押さえるべきポイントはある。取引先さんが安心して払えるように気を配ろう。
- 屋号、名前、住所、電話番号、メールアドレスなどは記載する。いつでも連絡が取れるように。
- ペンネームは本名と併記するのがおすすめ。
- 金額は根拠がわかるように書く。明細欄をつけて内訳を書く、等。
- 請求書の金額と振り込まれた金額が違うなら、それは源泉徴収されている。
- 請求書にはハンコを押す。
- 請求書を紙で送るときは普通郵便を使う。ゆうパックとかで送ってはダメ。
ところで、きっちり信用される請求書を作ってまじめに仕事をしていても、フリーランスとして活動していれば、誰だって一度くらいは、お金のトラブルに見舞われることがある。
ただでさえ、請求書を送ってから支払いまで1ヶ月とか2ヶ月とか待たされるのに、その間にお金が急に必要になったり、別の仕事でトラブル発生、なんてことがあると、不安でしかたない。フリーランスとしてやってきた人ならわかると思うけどそれめっちゃ怖いよね。私もわかる。
「フリーナンス」ってサービスを知ってる?請求書を提出すると、クライアントの代わりに早めに代金を支払ってくれるというサービスです。
ちょっと条件があるけど、請求したその日に払ってもらうことだってできる。これ、何かのときにあれば安心じゃない?
フリーランス独特の仕事上での事故とかトラブルの保険(あんしん補償)までついていて、しかも登録無料なので、ひとまず登録だけしてみるといいよ。
それってタダで登録して大丈夫なん?もう少し詳しく知りたい、って人にはこちらのブログ記事が詳しいので読んでみて。
フリーランスは全てが自己責任、何かあってからじゃ遅いから。「フリーナンス」に登録だけでもしておきなよ – クリエイター丙
目次 & 概要
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まえがき 9割のイラストサイトは仕事の役に立っていない
そもそもウェブサイトを仕事に役立てること自体が無理なのでは?そう思っているかたに、私の体験をお話しします。まえがきを読む » -
第1章 イラストサイトに仕事の問い合わせが来ないのは、こんな勘違いをしているから
「作品ギャラリー」を作ろうとしたり、ウェブサイトなんか活用できないものと思い込んでいたり。よくある勘違いを挙げました。1章を読む » -
第2章 仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦
どう作り、どう利用していくべきか、という全体の作戦をお伝えします。いちばん大切なのは、信頼を得ること。バズや過剰なアクセス稼ぎは要りません。2章を読む » -
第3章 仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう
ドメインやサーバー、コンテンツの用意のしかたを解説します。プロフィール文の改善例や、イラスト画像の準備のポイントなど。3章を読む » -
第4章 仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例
実際に運営されているウェブサイトのレイアウトとページ構成を解説します。なぜそのようになっているのか、デザインには理由があります。4章を読む » -
第5章 作ったあとどうする?上手な活用とは
ウェブサイトは作って終わりではありません。SEOについて、ブログのやりかた、営業メールの送りかた、現実の営業に活かしていく方法など。5章を読む »