イラストレーターさんで、Twitterやブログに「値切りはテンションが下がるので禁止です!」とか「タダではやりません!」とか「後から修正を言って来る人いい加減にしてほしいです!」みたいなことを書く人っていますね。
よくわかってない依頼主に対する文句や指導というか、グチというか。
イラストレーターはそういうことをTwitterでどんどん声高に発言すべき!みたいな風潮はもうそろそろ終わりにしないといけませんよ。そういう発言こそがイラストレーターの地位を下げているんだからね。
値切る客が、あなたのツイートなんかで啓蒙されるわけない。
イラストレーター本人は「啓蒙投稿」のつもりで流しているのだろうけど、はっきり言ってその効果はほとんどない。それどころか、これがイラストレーターの首を絞めてる。自分で自分の首を絞めてるだけじゃなく、同業者仲間全体の地位も下げてる。
私は長年イラストの仕事をやってきましたけど、ウェブ上にそういう投稿をする人は過去たくさんいたわけです。それで値切りや過剰修正がなくなるのなら、とっくになくなってますわな。
いまどき大阪人ですら値切ったことのない人がいるくらい、値切るという行為は日本人に馴染み薄い。なのにイラストの制作料は値切られる。なぜか?
イラストレーターは値切られるもの、という情報を、イラストレーターみずからが流布してきたからです。
タダでやらされてツラい、アホみたいな値段で搾取された、というツイートは、裏を返せば「イラストレーターはタダ同然でも仕事する」という事実を言いふらしていることに他なりません。
値切る客・ボランティアを求める客は、初めからそのつもりで声をかけてきます。そういう人がなぜそうなのかというと、「イラストレーターってこうやってSNSで声かけたらタダみたいな値段でも請けるんだよね〜」って思っているからです。
それがイラストレーターさんたちがみんなで作ってきた世界だよ。このままでいいの?
自分だけの「取引ルール」を設定しよう
じゃあどうしたらいいのか?
いろんなお店を思い返してみて?どんな商売でも、ルールは売るほうが決めていい。というわけで、イラストレーターも商売のルールを決めればいいんです。
私やいしつく!のメンバー様が実践しているルールにはこんなものがあるよ。
- 「最低価格より安くは請けられない」というルールにする
- ボランティアもこのルールに抵触するからお断り
- 「修正には必ず追加料金が発生する」というルールにする
- で、実際発生したとき許容範囲なら「今回はおまけしておきますね」と言って恩を売る
- 「一般個人からの依頼は請けない」というルールにする
- 予算も少なく、実績としての効果も薄い、そのわりに好き勝手言ってくるのが個人の依頼。一方で企業の中の人は責任があり変な行動は取れないので、安心して取引できることが多い
- 「客の方から手描きのラフを提出するよう求める」というルールにする
- 指示は図にして書いてもらうことを徹底する。マルチョンでもいい。これにより「そういうふうに依頼されましたので」という根拠が作れる
- 「必ず契約書を交わす」というルールにする
- あとからの無茶ブリ全般を防げる
こういうふうにルールを設ける。以上はみんなこの通りにしなさい!ってことじゃなくて、やってる仕事内容に合わせて自分で決めたらいいです。
で、これらのルールを取引のいろんなところで活用していきます。ポートフォリオやウェブサイトに掲載してもいいね。
取引ルールを活用すれば、愚痴や啓蒙なんてしなくていいんだ
「そういう決まりでして」って言われたらたいていの日本人は断れない。「そういうルールになってるんで、すみませんが」と言ってしまえば、まあそのルールはあなたが勝手に決めたものなんだけど、相手はそれを覆す理由を考えなきゃいけないので、交渉が有利になります。
例えば、イラスト制作のオファーがあって、値段を告げたら半額くらいに値切ってきた客がいるとしましょう。
そうしたらイラストレーターは「最低価格以下にはできないことになってるんで、すみませんが」と言って作業量を半分にすることを提案するか、できなければ断ればいいのです。
ルールさえ決めてあれば、単に条件が合わなかったね、で済む話。自分も相手も傷つけない。
なのに「こんなひどいお客様がいて〜もう値切りなんて応じません〜」なんて公共の場(SNSは公共の場だよ)で言いふらすから、後からまた値切られたり、余計悲しい思いをするわけだ。
プロなら、堂々と交渉せよ
こういう話をすると「私はクリエイターなので、商売っ気を出していくのはイヤです」みたいな反応が少なからずある。
いろんなスタンスがあっていいと思うし、商売関係なく面白いものだけ作りたいというのも別に悪くはない。
ただ、交渉もせずにタダ働きや値切りを受け入れたんなら、後から愚痴んなよ、って言いたい。その愚痴がイラストレーターみんなの足を引っ張っているから。
無茶を言われたら、それは受け入れられないですって誠意をもって直接相手に説明する。そのほうが、後からこっそりグチツイするよりずっと責任感があって立派な態度だと思うんだけど、どうかな?
イラスト制作を商売として何年もやっていけてる人はそれができる人だし、そういうイラストレーターが増えてほしい、っていしつく!は願っています。
いしつく!の教科書
「仕事の依頼が来るポートフォリオサイトって、どうやって作ったらいいの?」
そんなイラストレーターに読んでほしい全5章のnoteマガジンです。専門用語はできるだけ使わずに書きました。
目次 & 概要
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まえがき 9割のイラストサイトは仕事の役に立っていない
そもそもウェブサイトを仕事に役立てること自体が無理なのでは?そう思っているかたに、私の体験をお話しします。まえがきを読む » -
第1章 イラストサイトに仕事の問い合わせが来ないのは、こんな勘違いをしているから
「作品ギャラリー」を作ろうとしたり、ウェブサイトなんか活用できないものと思い込んでいたり。よくある勘違いを挙げました。1章を読む » -
第2章 仕事の取れるイラストサイトを作るための、正しい作戦
どう作り、どう利用していくべきか、という全体の作戦をお伝えします。いちばん大切なのは、信頼を得ること。バズや過剰なアクセス稼ぎは要りません。2章を読む » -
第3章 仕事の取れるイラストサイトを作るためには、こんな材料をそろえよう
ドメインやサーバー、コンテンツの用意のしかたを解説します。プロフィール文の改善例や、イラスト画像の準備のポイントなど。3章を読む » -
第4章 仕事の取れるイラストサイト、レイアウトの正解例
実際に運営されているウェブサイトのレイアウトとページ構成を解説します。なぜそのようになっているのか、デザインには理由があります。4章を読む » -
第5章 作ったあとどうする?上手な活用とは
ウェブサイトは作って終わりではありません。SEOについて、ブログのやりかた、営業メールの送りかた、現実の営業に活かしていく方法など。5章を読む »